日本の総選挙への動きを米国側はどう見ているのか――。
早くも米側の一部の専門家は自民党の勝利と安倍晋三氏の総理就任が確実だと見て、安倍政権への期待や懸念を表明するようになった。
米国が日本の民主党政権には失望し、特に日米同盟の将来への暗い影を心配するようになったことは、すでに明白だった。鳩山由紀夫首相の言動をオバマ政権高官らが「ルーピー(愚かな)」と半ば公然と呼んだことがその例証だろう。
菅直人首相、野田佳彦首相となってもなお、米国は日米同盟の弱体化を懸念していたことが知られている。米側の日本政治ウォッチャーたちは、日本の民主党が安全保障に関してはなお極めて微妙ながら反米、反防衛の志向があることを折にふれ指摘していた。だから日本の民主党政権が続く限り、日米同盟は漂流や弱化が避けられないという懸念が米側では広がっていた。
となれば、その民主党ではない政党、つまり自民党が政権を取ることは、少なくとも日米同盟にとっては米側からすれば、より望ましいということになる。
安倍政権の誕生は「日米同盟が健全化する絶好の機会」
米国側のそうした認識を明確にする見解がワシントンで公表された。ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」のアジア研究専門の上級研究員、ブルース・クリングナー氏の報告である。
同氏の報告は日本の総選挙での自民党の勝利と安倍晋三氏の総理就任をずばりと予測したうえで、安倍政権のこの時期の再登場が日米同盟にどのような功罪をもたらすかを論じていた。さらにクリングナー報告は、米国が安倍新政権に何を期待し、何を要請すべきかを具体的に提案していた。
この報告は「米国は日米同盟を深化させるために、日本の政治的変化を利用すべきである」と題されていた。