ニッケイ新聞 2012年11月1日
芝浦工業大理事長ら来伯、「少数精鋭、結果を重視」
ブラジル政府は、日本を含む十数カ国の教育機関に留学生を派遣し、科学技術分野の人材育成とブラジルの競争力強化を目的とした奨学金プログラム「国境なき科学(Ciencia Sem Fronteiras)」を発表した。
日本に向けて1000人を送り出す構想であり、本紙が大使館に問い合わせたところ、日本側ですでに1300人もの受け入れ枠の申し出があることが分かった。
大半は国公立であり、数少ない私学の1つ芝浦工業大学(東京都)の五十嵐久也理事長ら3人が各関係機関への表敬訪問のため27日に来伯したのを機に、意気込みなどを聞いてみた。
伯国ではジウマ政権の目玉政策PACなどの大規模インフラ整備構想が続々と計画されている関係から、10万人規模で技師が不足していると連日のように伯字紙が報じている。このような中で先進国に理系学生を留学させて、技師を育成することが「国境なき科学」の主眼だ。
在伯日本国大使館の井上睦子一等書記官によれば、すでに日本側では約80の大学と研究機関で、約1300人分の受け入れ枠が確保されているという。伯国側の留学構想に対応し、日本側では受け入れ枠を用意した。
次は当地での応募者がどれだけ集まり、その選考が早急に進むかどうかという段階になっている。それ次第では来年4月から開始することも可能のようだ。
芝浦工大関係者の来伯は、今年8月にあった同制度の説明会への参加に続き、今回2回目。同工大一行は、日本国大使館、CAPES(高等教育支援評価機構)、CNPq(国家科学技術発展審議会)、在聖総領事館、USPを表敬訪問した。
大学院を中心に東南アジアからの留学生ら約100人を抱え、全課程が英語で受講できる体制がとられている。来年の伯国からの受け入れは10人程度を想定しており、現行と同様の留学生対象プログラムが用意される。日本人学生との共同生活を前提とした国際学生寮の建設も進められており、来春の完成を予定する。
五十嵐理事長は初来伯の印象を「何年か先には世界をリードしていく国になるのでは」と語り、「ブラジル人学生を受け入れることで、両国間の関係の発展に貢献できるような人材を育成したい。そのためにもまずは少人数に対し、しっかりと結果として現われる教育ができれば」との期待感を表明した。
同校への問い合わせは豊洲学事部国際推進課(kokusai@ow.shibaura-it.ac.jp)まで。