鳩山由紀夫首相の電撃辞任のあおりで日本ではあまり関心が高くなかったが、6月2日は韓国政界にも大激震が駆け巡った。

 この日、投開票された統一地方選挙で「圧勝」が予想された与党ハンナラ党候補が有力選挙地で次々と落選、「まさかの惨敗」を喫したのだ。

若者の不満が爆発、与党が惨敗に追い込まれた韓国

韓国大統領選の投票始まる、李明博候補の優位揺るがず

2007年の大統領選で投票する李明博大統領候補(当時)と夫人〔AFPBB News

 北朝鮮の魚雷によると見られる哨戒艦沈没事件は、対北朝鮮強硬策を掲げる李明博与党に有利に働くと見られた。

 ところが、結果は予想に反して惨敗。その「異変」を演出した主役は「戦争に行きたくない」若者だったようだ。

 今回の統一地方選挙は、2008年春に就任した李明博大統領にとっては「中間評価」の場だった。

 米国の中間選挙もそうだが、韓国でも、任期中間の地方選や国会議員選挙では有権者の間で政権党への「牽制」の心理が働き、野党有利の傾向が強かった。

 しかし、3月26日に北朝鮮が韓国の哨戒艦を魚雷で沈没させる事件が起きて状況は一変した。「北朝鮮をつけあがらせたのは、金大中、盧武鉉政権の10年間にわたる包容政策だ」として野党を攻撃。独自制裁など強硬策を取る李明博大統領への支持が高まったかに見えた。

 統一地方選挙前の世論調査でも、ソウル市長選のほか、与野党激突となった主要選挙区で与党ハンナラ党候補が野党候補に大差をつけ、政界内では「与党圧勝ムード」が漂っていた。

 ところが蓋を開けてみたら、全くの予想外の結果が出てしまった。主要7市長、9道知事選のうち、与党ハンナラ党候補が勝ったのはわずか6カ所だけ。激戦だった仁川市、江原道、慶尚南道、忠清南道では野党候補や無所属候補に競り負けた。

選挙に関心示さなかった若者がツイッターの書き込みで次々投票所へ

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北朝鮮の魚雷攻撃で真っ二つになった韓国の哨戒艦〔AFPBB News

 事前の世論調査では20ポイント近くの差で与党候補がリードしていたソウル市長選も、大接戦となった。ソウルの25の区長選では、前回全勝した与党候補が4勝21敗の大惨敗だった。

 一体何が起きたのか。事前の世論調査と実際の選挙結果にこれだけ大きな差が出たのには、2つの理由がある。1つは、予想外に多くの若者が投票したこと。もう1つは、哨戒艦沈没事件で政府が打ち出した強硬姿勢に対する一般国民の意識の読み違いだった。

 大学生など20代の多くの有権者は、直前まで選挙に関心を見せていなかった。ところが、当日になって突然のように投票所に現れ、野党候補に一票を投じたのだ。今回の選挙で猛威を振るったのが、ツイッターだった。

 若者に人気の高い文化人や芸能人が、ツイッターを通して自分が投票している様子を知らせ、「投票しようぜ!」「友達にも投票を呼びかけよう!」「選挙は国民の義務だ!」などと呼びかけたのだ。

 ツイッターを通した投票呼びかけ運動は投票日直前から始まり、投票当日にピークとなった。あちこちで「私の投票確認証」と銘打って、投票する自分の姿の写真をツイッターにアップする若者が急増したのだ。