中国のバブルが崩壊し始めた。中国政府が掲げる今年度の経済成長目標は7.5%だが、その達成は難しいようだ。これまで中国政府は農村部から都市部へ出てくる人々の雇用を確保するために年率8%の成長が必要であると言ってきたのだから、7.5%は控えめな数字なのだが、その達成さえも危ぶまれている。バブルが崩壊し始めたと考えてよい。

 筆者の研究室には中国からの留学生がいるが、その学生によると、現在、中国では大学を卒業しても、条件の良い就職先を見つけることが極めて難しいそうだ。多くの若者が低賃金労働に甘んじている。それは米国や日本に留学した学生も同じで、当研究室の学生も帰国してからの就職を心配している。

 経済が年率7~8%で成長している国の就職事情とはとても思えない。もし、本当に経済が7~8%で成長しているならば、大卒は引っ張りだこだろう。

 日本がバブル景気に沸いてきた頃を思い出してもらいたい。バブル最盛期の1988年の経済成長率は7.2%であったが、その頃、多くの学生は複数の会社から内定をもらって、内定を断ることに苦労していた。中国政府が発表する経済成長率にはウソが含まれている。

 ついこの前まで、ヨーロッパの高価なワインはほとんどが中国で消費されているなどと言われていた。今もその余韻は残っているようだが、ちょうど日本の90年代の初頭のように、多くの人々が経済の潮目が変わったことに気づき始めた。

 上海の株価指数は既に大きく下落している。不動産価格についての情報はまちまちだが、大きな目で見れば下落傾向にある。現在の中国の経済状況は90年代初頭の日本によく似ている。

中国にもいる「団塊の世代」

 それでは、今後、どうなるのであろうか。中国は90年頃の日本とは大きく異なり発展途上にあるから、もし景気が後退しても再び成長軌道に戻ると見る向きも多い。だが、筆者はそうはならないと考えている。それは中国で急速に少子高齢化が進行しているためだ。