9月25日付ニューヨーク・タイムズ(NYT)の中国関係記事は久しぶりに読みごたえがあった。「中国指導者家族に数十億ドルの隠し資産(Billions in Hidden Riches for Family of Chinese Leader)」と題するこの記事、恐らく中国で読むことはもはやできないだろう。

 中国当局は直ちにNYT紙サイトへのアクセスを遮断した。経験則上、中国が国内で報道を認めない内容は真実の可能性が高い。

 だが、なぜか日本での関連報道は少ない。そこで今回はNYT報道内容を勝手に検証し、その真偽につき筆者の独断と偏見を述べたい。(文中敬称略)

日本マスコミは後追い報道

 週末だったためか、日本での報道は比較的低調だった。しかも、悲しいかな、大部分はNYT記事のいわゆる「後追い」報道。日本マスコミ独自の本格記事はあまりない。優秀な特派員が大勢いるのに。まさか、党大会直前ということで、中国側に配慮したわけでもあるまい。

 英語に investigative journalism という言葉がある。事実関係を積み上げた地道な調査結果に基づく報道という意味だ。「欧米のジャーナリストが最も憧れ、かつ誇りに思うのは、こうした調査報道なんだよ」。昔NYTの記者がこう言っていたのを改めて思い出した。

 NYTの今回の調査は合法的だ。改革開放後、中国は外国投資奨励のため企業関係情報の公開を進めた。その結果、弁護士・コンサルタントならSAIC(国家商工行政管理総局)から企業関連情報を1社当たり100~200ドル程度の費用で入手できるようになったという。

 これに目をつけたNYTは、1年ほど前から北京、上海、天津など主要都市のSAIC地方支局に狙いを定めた。温家宝首相の親族が管理すると思われる企業ネットワークを丹念に調べ上げ、合計数千ページもの関連企業文書を入手することに成功したのだそうだ。

 とても片手間でできる仕事ではない。恐らくは、大規模な専従班を作り、膨大な公開資料を徹底的に調べ直したのだろう。当然、温家宝批判勢力からの情報リークもあったはずだ。コスト的にも、時間的にも、かなりの難作業、これこそ investigative journalism の真髄である。

 果たして、結果は実に刺激的だ。やはり、NYTは中国最高指導者にすら喧嘩を売る勇気と矜持を持つ一流紙なのか。それとも、中国政府が主張するように、「中国を貶める、何らかの隠された意図のある」世紀の大誤報だったのか。