クルマは極力使わず、自転車通勤。オーガニックの野菜を食べ、屋根には太陽光発電システム──。エコロジーはもはやブームではなく、ライフスタイルの1つとして定着している。樹木葬や散骨など、死んだ後まで「エコ」にこだわる人も出てきたが、遺体を凍結乾燥させて粉砕、肥料にして大地に還そうという究極のエコ葬儀が、スウェーデンで始まろうとしている。

土の中で、半年から1年で堆肥化

スウェーデン ネズント

 スウェーデン第2の都市ヨーテボリから北へ約1時間のネズントは、人口約100人の小さな町だ。ここに遺体を急速凍結して堆肥化する埋葬法を開発したプロメッサ・オーガニック社がある。文字通り身体が土に還る、その方法とは・・・

 死後1週間以内に、遺体をマイナス18度で凍らせる。その遺体をジャガイモやトウモロコシのでんぷんを主原料とする棺に納め、マイナス196度の液体窒素に浸して完全凍結させる。実はこれは、インスタントコーヒーやカップスープなど、フリーズドライ食品を作る技術と同じ。

基本は、インスタントコーヒーなど、フリーズドライ食品の製造技術と同じ遺体堆肥化の手順
(画像提供Promessa Organic)

 人体の細胞は急速冷凍処理によって硬くなり、崩れやすくなっているので、棺ごと機械で振動させると、短時間で粉状になる。乾燥機にかけて水分を完全に飛ばし、歯の詰め物など残った金属を取り除けば完成だ。粉末には臭いも無い。

 粉は25~30キログラムになり、これを、でんぷんで作った別の棺に入れて地中約50センチメートルに埋める。棺も含めて1年以内で完全に土に還るそうだ。

 樹木葬のように木の根元に埋めてもいいし、逆に埋葬した後で、故人の思い出として木や花を植えてもいいだろう。

 プロメッサ・オーガニック社では、この方法を「プロメッション(promession)」と呼ぶ。

 同社は2001年に設立。埋葬施設の建設を計画したが、法律上の問題などで、なかなか政府の許可が得られず、ようやく2009年10月に事業化が決まった。

 同社では国内第1号施設を2010年12月にオープンする計画だ。予定地はヨーテボリから東に2時間ほど走ったヴェッテルン湖最南端のヨンショーピング市だ。

 同市は2001年当時、火葬場施設の改装を計画していて、新しい埋葬技術に関心を持った担当者がすぐにプロメッサ社に連絡を取った。

 その後、プロメッサ社との研究を重ねて実用化を確信し、政府の許可を待ちわびていたのだった。スウェーデン国内のほかの15都市も高い関心を示していて、ヨンショーピング市の施設稼働に注目している。

 費用は、純粋負担額は1遺体につき約290ユーロ(約3万2500円、1ユーロ112円計算)。これは葬儀料金の安いスウェーデンでの価格で、他国でプロメッションを導入する場合は、価格が異なる。