「MV-22オスプレイ」の安全性をめぐる議論が喧しい。もし、本当に安全性に問題があるなら、米軍が採用するはずもないわけだから、いずれ安全性の問題は終息するだろう。オスプレイについて本来問われるべきは安全性ではなく、沖縄に配備されることの戦略的意味のはずだ。

 7月23日、藤村修官房長官は、“米国の説明によれば”という前提をつけながらも「現行の機種(「CH-46」ヘリコプター)に比べ、スピードは2倍、積載量は3倍、航続距離は4倍とアジア太平洋地域での抑止力は格段に向上すると受け止めている」と述べた。

 すなわち、オスプレイ配備によって、より早く、より多く、より遠くへ海兵隊の戦力を展開でき、その向上した海兵隊の戦力が日本を含むこの地域での武力紛争発生を抑止する効果を高めるというわけだ。

オスプレイ配備を最も嫌がっているのは中国

 しかし、厳密に言えば、この場合の武力紛争は、米海兵隊が投入されてしかるべきものに限られる。北朝鮮の長距離弾道ミサイルによる挑発や、同様に中国の台湾に対する弾道ミサイル攻撃の脅しに対処できるものではない。

 北朝鮮や中国の海・空軍による大規模な侵攻にも対応し得ない。対応しうるのは、韓国のソウルや台湾の台北などにおける政権の中枢を急襲するゲリラ的攻撃などであり、迅速に海兵隊を現地に送り込み反撃するといった事態を想定すれば、オスプレイ配備のメリットは極めて大きい。

 例えば沖縄(普天間基地)から台北までの距離は約650キロメートルあり、「CH-46」ヘリの航続距離では、増槽を付けてようやく届くところ、オスプレイなら空中給油なしで楽々と往復できる。

 中国メディアの報道を見ると、オスプレイの作戦行動半径に尖閣諸島はおろか上海まで含まれるといった指摘が見られる。沖縄から尖閣諸島まで所要時間は1時間という記述もあった。中国が東シナ海をにらみオスプレイ配備に神経質になっていることが分かる。

 だからこそ、であろうか。中国メディアは日本国内でオスプレイの安全性を巡って配備に反対する声が強いことも詳細に報道している。はっきりとは言わないものの、オスプレイ配備を巡り日本の国論が割れ、日米関係もギクシャクすることを期待しているかのようにも見えるが、オスプレイ配備を最も嫌がっているのは中国なのであろう。