はるばる加賀から江戸まで運ばれた「お氷さま」

日本が“氷先進国”に駆け上がるまで(前篇)

2012.07.27(Fri)漆原 次郎

 酷暑の季節、一時の涼をとるのに氷は欠かせない。グラスの中に角ばった透明な氷をカランと入れ、飲み物を注いで飲む。氷を細かく欠き砕いてかき氷にし、シロップとともにシャキシャキ頬張る。冷たさが体に直接、伝わってくる。

 暑いからと氷を食すのは、いまは当然のこと。だが、気温を氷点下まで下げる技術のなかった時代、夏の氷の価値は格別だったはずだ。実際、歴史の記述には、氷がいかに珍重されたものだったかがうかがえる。

氷。いまでは店や家庭で気軽に手に入れられるが、冷凍技術のない江戸時代まで、とくに夏場は貴重な食材だった。

 冷凍技術によって氷をつくることが当然になった近現代、日本は製氷の技術を高めてきた。その質は世界一とも評される。技術の高さをどのように得てきたのだろうか。

 今回は「氷」に焦点をあてて、日本における歴史と技術を追っていく。

 前篇では、製氷技術がなかった時代、人びとがどう氷を味わってきたのか、その歴史を追う。後篇では、質の高い氷をつくる現代の技術を、製氷加工機メーカーで氷の技術に関する研究室を立ち上げている氷のエキスパートに聞くことにする。

4世紀の日本にあった氷室(ひむろ)

 電気で氷をつくることのなかった時代にも、日本人は工夫により夏に氷を食べてきた。『日本書紀』をたどると、4世紀の仁徳天皇の時代の氷に関する史実にたどり着く。

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