新興国の経済成長が企業にとって意味するものは、市場規模の拡大だけに限らない。今後も、莫大な数の中産階級が生まれてくる。国民の消費行動や嗜好も大きく移り変わっていく。さらに、教育への投資が増大することで、人的資源の調達拠点としての重要性も高まってくる。
グローバルビジネスを展開する企業は、そうした変化に対応するための新たな発想と戦略が求められる。
その中で世界のリーディングカンパニーはどのような見通しを立て、どんな手を打とうとしているのか。また、日本企業がグローバル市場で再び存在感を取り戻すための課題は何か。
IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 ストラテジー&トランスフォーメーション マネージング・パートナーのマーク・チャップマン氏と、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング パートナーの池田和明氏に話を聞いた。
テクノロジーで「顧客とのつながり」を強化する
──まず世界のグローバル企業がどのような方向に向かっているのか、大きなトレンドについて教えてください。
マーク・チャップマン氏(以下、敬称略) 企業活動の国際化は、輸出と輸入から始まりました。次に、世界の主要な市場、例えば日米欧、環境に適応し、その変化にすばやく適応するために、主要市場に統括会社を置き、本社機能の一部を移転するという企業形態が志向されました。これを我々は「マルチナショナルカンパニー」と呼んでいます。
しかし、今や、新興国経済の成長により、世界の主要市場は日米欧だけではありません。また、地域の違いを超えて顧客のニーズが似かよってきたり、逆にニーズが細分化するとしても地域以外の要因によるものが増えてきました。さらに、新興国の人材のクオリティが向上したこととITの進化によって、拠点の立地先候補も世界中に広がっています。
すると、地球全体を1つのマーケットと捉え、事業運営に必要な機能も世界の最適地に置くという企業の形が実現可能なものになりました。この形は効率性に優れるとともに、世界中のナレッジを共有し、最適な人材を活用できるという点で優位性を持っています。