北東アジアの安全保障情勢の焦点となっているのは、言うまでもなく北朝鮮の核問題である。2011年、金正日総書記の死去で国家指導者が若い金正恩第1書記に交代しても、この問題は変わらず周辺諸国にとって重大な課題であり続けている。

 北朝鮮の動向をめぐる外交上の密接なプレイヤーとして、「6者会談」に加わる日本、韓国、米国、ロシア、中国が挙げられる。

 これらの国々の北朝鮮に対する態度は、「核兵器拡散の阻止」という点で緩やかな方向的一致があるものの、その他の問題はそれぞれの国益にからみ一致していない面が多い。実はその中で大きな影を投げかけているのが、竹島(独島)領有問題なのである。

「西側」陣営の団結に立ちはだかる竹島領有問題

 「6者会談」の枠組みを構成するのは、1950~53年の朝鮮戦争主要参戦国とその同盟国だ。朝鮮戦争当時まで立ち返るなら、「ロシア・中国・北朝鮮」チームと「米国・韓国・日本」チームの対峙と言えなくもない。

 そして、後者のチームが心から協力し合う関係を築く上で、少なからぬ心理的障害となっているのが、竹島問題だ。

 米国、韓国、日本は自由主義政治体制と市場経済というシステム・価値観を共有する「西側国家」である。米国は、日韓両国と安全保障面での協力を約した条約を締結し、それぞれの国に軍事基地を有し米軍を駐留させている。対北朝鮮(そして広く見るなら対中国)安全保障策の観点で、3国の利益は共有できる部分が大きい。しかし、日韓相互の防衛協力は、ほとんど進んでいないのが実状だ。

 その根本的要因となっているのが、日本側から見るなら島根県隠岐郡隠岐の島町に属している竹島を韓国側が54年以来強引に占拠し、実効支配してしまっていることなのである。

 これが日韓関係に深く刺さったトゲとなり、防衛面での協力など双方の共通の利益に基づいた国家間協力深化を妨げるものとなっている。

かみ合わない日韓双方の主張

 領土問題は国家主権に関わるとともに、島嶼の場合、周辺海域の経済的開発権や漁業権と密接に関わってくる。国民としてのアイデンティティーだけでなく、実利にも直結するので、その帰趨が国内世論動向に直結しやすい。