「トマトカーシャ」をご存じだろうか。ソバの実とトマトを主原料にしたトマトソースである。作ったのは北海道・喜茂別町(きもべつちょう)在住の橋口とも子さんだ。
橋口さんは、人口2400人の町に住みながら地域活性化に取り組み、2012年3月に起業。地元農産物を活用した商品開発と販売を行っている。ゆくゆくは農山村資源を活用した地域密着・住民参加型のビジネスモデルを構築したいという。
橋口さんの取り組みの事例からは、個人や企業が緩やかに結びついたネットワークの可能性が見えてくる。本稿では、橋口さんの取り組みを紹介した上で、地元食材を利用した地域ビジネスの要点を探ってみたい。
「地域おこし協力隊」メンバーが起業
北海道喜茂別町は、札幌市の南側に位置する人口2400人の農業を基幹産業とする町だ。大都市札幌に隣接するものの、周囲は羊蹄山や尻別岳をはじめとする山々に囲まれており、静かな農村となっている。
冷涼な気候で冬は雪が多く降る一方、馬鈴しょ、てん菜、小豆などを中心に畑作農業が盛んで、近年ではトマト、メロンや花などの高収益作物の栽培も進む。日本のアスパラガス栽培発祥の地ともされ、特にホワイトアスパラは全国的にも有名となっている。
一方で農業を取り巻く環境は厳しさを増す。農家の高齢化、農家戸数の減少、担い手不足などが、地域農業の大きな課題となっているのだ。
そこで町は2010年、総務省の「地域おこし協力隊」事業を活用し、10名の協力隊員を募集。2年間の集落支援活動を実施した。この3月に任期を終えた隊員の多くがそのまま町内に定住。起業して地域の一員となっている。
冒頭の橋口さんは、隊員の1人。ソバの実とトマトを主原料にした「トマトカーシャ」を商品開発。起業して、さらなる地域おこしを目指している。