日本企業による海外企業の買収が、今までになく活発になっている。「フィナンシャル・タイムズ」によれば、「今年は、国境を越えたすべてのM&A案件に占める日本企業の割合が金額ベースで11%に達している。これに対して2011年は9%、過去10年間のほとんどの期間はわずか2~3%だった」(「衰退よ、サヨナラ! 再び世界を股にかける日本」、2012年6月8日)という。
海外企業の買収以外にも、海外事業の拡張、海外企業との提携など、日本企業のグローバル化に関するニュースはもはや目にしない日がないくらいである。
3月に日本IBMは、そうした日本企業のグローバル化を支援するソリューションを発表した。名称を「IBM Global Ready Solution(グローバル進出 総合支援パッケージ)」という。経理・財務、人事、営業活動、購買、サプライチェーンマネジメントといった様々な分野のためのソフトウエア、サービス・アセットなどを一体化したものだ。
日本IBMはこのソリューションの特徴として、実務担当者が“監修”し、ユーザー企業へのアドバイザーとして加わる点を挙げている。「監修者」というのは日本IBMで業務変革に実際に携わった社員たちである。IBMは全世界でここ約10年にわたって、自らグローバル化を進めてきた。その過程で自分たちが得た知見やノウハウをソリューションに詰め込んだのだという。
IBMが今まで「グローバル化を進めてきた」というのは意外な気がする。日本企業のグローバル化が叫ばれるよりずっと前からIBMは多国籍展開を図っている。現在、IBMが事業展開する国は約170カ国に達する。IBMがグローバル企業でなくて一体どこがグローバル企業だというのか。
IBMが進めてきたグローバル化とは一体どのようなものか。日本IBMトランスフォーメーション・ストラテジー&ソリューション担当の金巻龍一常務に話を聞いた。
これだけ世界が変化すると国別の戦略は意味がない
──まず、IBMでは「グローバル化」をどのように定義しているのでしょうか。
金巻龍一氏(以下、敬称略) 私たちは「グローバル化」には3つの段階があると考えています。
最初の段階が「インターナショナル化」です。ある企業がオンリーワンの製品やサービスを持っていて、それを日本から輸出する、もしくは海外に工場を設置してつくることを指します。
やがてインターナショナル化に勢いが出てきて、海外に拠点や現地法人をつくるようになる。これが第2段階の「マルチナショナル化」です。日本でビジネスを展開する従来の外資系企業は、このタイプに当たります。