古今東西を問わず、中小企業政策は、支援対象となる個別中小企業について一生面倒を見てくれるものではない。

 日本でも、中小企業基本法の第3条(基本理念)で「独立した中小企業者の自主的な努力が助長されることを旨とし」とされ、中小企業の自助努力が基本となっている。

 また、中小企業政策というものは特定の中小企業だけに偏って支援してはいけない。薄く広く政策支援の恩恵が行き渡ることが大切だ。

 従って、政策支援を行う側にとっては、政策支援が呼び水になって民間支援(出資、銀行融資、外資との提携などによる技術移転など)を呼び込み、成長・発展できるとの「確信」が重要で、そのための目利き力が必要となる。

 しかし、一部の中小企業にとっては、特定の政策支援を活用して新事業をスタートさせた後に「梯子を外された」と感じることもあるようだ。最初に受けた支援が手厚いほど、そういうふうに感じるのかもしれない。

タイの環境系ベンチャー企業経営者に聞く

バンコク市内(筆者撮影)

 タイの環境関連会社で、Biodegradable Packaging for Environment Co., Ltd.(BPE)という会社がある。3年前、タイ中小企業振興庁(OSMEP)の紹介で初めて訪問し、その後、動向が気になってフォローしている会社だ。

 本社はバンコク市内、工場はナコンサワン県に所在する。タイ中小企業振興庁が運営しているVCファンドの担当者が本社に案内してくれ、応接室に入ると、まもなくウェラチャット会長とスラサック社長が登場した。

 会長は、情熱を内に秘めた華人経営者でビジョナリストといった感じ。社長はいかにも堅実そうな実務家タイプであった。

 OSMEPという役所による面談のセッティングであったためか、先方には警戒心もなく、最初から打ち解けた雰囲気でインタビューが始まった。いつも通り、事業内容と会社設立の沿革から聞き始めた。

 事業内容は、環境にやさしい繊維包装パッケージ(食器皿、弁当箱等)の製造だ。繊維包装は、-5度~250度まで耐性があり環境にやさしい生物分解素材とのこと。原料はさとうきびで、土に戻しても安全なもののようだ。

 インタビューにおける最大のポイントは、このベンチャー企業の強みは何かということだが、まず、タイ国内では同業競合先は見当たらないとの説明があった。

 真実なのかどうかはインタビュー時点では定かではなかったが、インタビュー終了後にVCファンドの担当者に確認してみたところ、どうやら本当らしい。もちろん海外にはライバル企業があり、タイ国内やアジア域内で競合するのは中国企業の製品だ。