マット安川 今回のゲストは元総務官房審議官・稲村公望さん。アメリカ取材報告や増税問題、郵政民営化見直しの内情などをお聞きしました。

世界は市場原理主義に「ノー」を叫んでいる

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:稲村公望/前田せいめい撮影稲村 公望(いなむら・こうぼう)氏
中央大学大学院客員教授。鹿児島県徳之島出身の元郵政官僚。総務省大臣官房審議官を経て2003年日本郵政公社発足と同時に常務理事に就任、2005年退任。(撮影:前田せいめい、以下同)

稲村 フランスでサルコジ大統領が負けて、ギリシャの選挙でもすごい地殻変動みたいなことが起きた。ヨーロッパが分裂するかもしれないという危機的な状況です。

 アメリカも大統領選を控えて揺れ動いています。普通なら泡沫候補と言われかねないロンポールさんが善戦していたりね。勝つ見込みはないと思うけど、もしかしたら共和党大会で波乱を起こすかもしれない。

 「オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)」っていうのがあるでしょ。上位1%の富裕層がアメリカの富を独占している、われわれは99%だと言って、大勢の人がウォール街を占拠した。この3月にはワシントンにテント村ができました。20年前のアメリカだったら考えられなかったことです。

 私はこういう状況を危機というよりも、いい方向に変わるチャンスなんじゃないかと思っています。今までは世界中が金儲けばかりに一生懸命だった。お金のことを何より優先していた。経営者は会社は株主のものだとか、しゃあしゃあと言ったものでした。

 お金儲けが一番だという考え方で世の中を覆って、みんながちゃんとした判断をできないようにするという政治的手法が、組織的に行われたんじゃないかと思うくらいです。

 その種の市場原理主義、新自由主義的な政策は、どこの国でも成功したことがなく、今やそれらは世界的に修正されつつあります。最近、世界各地で起きていることも、お金ありきの考え方にみんながノーを叫び始めたことの表れでしょう。私はむしろホッとしたような気持ちです。

アメリカに原爆投下などの過去を反省する気配アリ

 アメリカにいたことがあるからよく分かるんですが、あの国はよその国を自分たちに従わせるところがある。

 いい意味でも悪い意味でも、ある種の枠組みに他国を取り込んで自分たちの考え方を押しつけるようなやり方が非常に上手です。国際連合なんかはいい例ですが、あの手の世界的な組織はほとんど、アメリカが考えた枠組みでしょう。

 私はアメリカを応援したいし、仲良くすべきだと思うけど、言われるがままになっちゃダメだと声を大にして言いたい。