今年の2月29日、震災復興の原資にするとして国家公務員の給与削減法案が成立しました。2012年度から2年間、平均7.8%の引き下げとなりますが、この時、裁判官の給与引き下げ法案も提出、可決されました。

 マスメディアの報道ではさらっと触れられているだけなので目立ちませんが、これは画期的なことです。

 裁判官も公務員なんだから当然だろうと思われる方が多いでしょうが、裁判官の給与は在任中下げることができないと日本国憲法79条、80条に明記されています。すなわち、裁判官の給与削減は憲法違反なのです。

 にもかかわらず、なぜ引き下げが行われたかというと、裁判所から政府に給与削減の申し出があったからです。裁判所には法案提出権がないため、内閣に提案して下げてもらったということのようです(参考:日本共産党 宮本岳志衆議院議員のサイト)。

 裁判所は、おそらく「国家公務員の賃下げが行われるのに、自分たちだけ賃下げされないのは居心地が悪い」程度の考えで賃下げ提案を行ったのではないかと思われます。

 しかし、これが計算された上での提案なら、裁判所は世間が考えているよりしたたかな戦略眼を持っていると言えるでしょう。

本当の目的を隠して良い印象を与える

 何事をやる場合にせよ、特に必要に迫られてどうしてもそうせざるをえないような時でも、万事にぬかりのない人物なら、自分から進んでそれをやっているような印象を、いつも人々に植えつけるのだ。
(『ディスコルシ 「ローマ史」論』、ニッコロ・マキァヴェッリ著、永井三明訳、ちくま学芸文庫)

 

 紀元前405年、共和制ローマは、長年続いていたウェイイ人との戦争で大きな戦略変更をします。ウェイイとはエトルリア系の国家で、当時、共和制ローマと覇権を争う強国でした。

 ローマは従来行っていた直接攻撃では埒が明かないので、包囲戦でウェイイを屈服させようと考えたのです。