中国の海洋権益の拡大に向けた活動がますます活発になっており、周辺諸国とのいさかいが絶えない。南シナ海ではベトナムやマレーシアなどと、そして東シナ海では我が国との間に確執が絶えず、中国の最近の行動は目に余るものになってきた。
尖閣諸島は中国の核心的な利益
一昨年(2010)9月の中国漁船衝突事件の時の我が国の対応には、領土に対する主権という観点から毅然さを欠いていた。このような対応を続けると、やがて中国の領土・領海侵攻を招く結果になるだろうと危惧されたが、その通りになってきた。
我が国は、排他的経済水域(EEZ)の管理を的確にするため無名の島に名前をつける作業をしているが、今年の1月尖閣諸島の4島の命名作業が明らかになると、尖閣諸島は中国の「核心的な利益」であり、日本が命名することは容認しないと言ってきた。
中国が「核心的な利益」という場合は、「絶対に譲歩できない国家主権や領土」を意味する時であり、これまでは台湾やチベットに使ってきたが、尖閣諸島については領有権は主張していたが核心的な利益という言い方はしていない。
中国としては既に尖閣諸島も台湾やチベットと同等の領土的な地位づけに置いていることが明白になってきた。
2月には、沖縄県久米島沖合での我が国の海洋調査に対して、「ここは中国の法令が適用される海域だから調査を中止せよ」と言ってきた。もちろん我が国の排他的経済水域での正当な調査であり、明らかな言いがかりである。
東シナ海でのガス田開発、尖閣諸島の監視などを目的とした中国軍機の飛来も急増しており、沖縄の南西航空混成団による緊急発進回数(スクランブル)も昨年は過去最多を記録している。
中国の領土意識は極めて独善的であり、台湾はもとより南西諸島もかつては琉球王国として中国の朝貢国であり、自らの支配下にあったとの認識であり、黄海・東シナ海・南シナ海も自国の海と考えている。
日本に対しても隋・唐の時代からの朝貢国であり、今でも心底には中国の属領だという意識を持っているようである。
中国はこの十数年来、海空軍力とミサイル戦力を飛躍的に強化してきたが、その目的は、国力強化のために必要なエネルギー資源などの確保を目指して海洋への進出を果たすためであり、その必成の目標が東シナ海・南シナ海を中心とする海洋正面での権益の拡大である。