2012年4月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
天皇陛下が心臓手術を受けられてから1カ月が経った。この間、陛下ご自身が出席を強く望まれたと伝えられる震災1周年追悼式典にも出席されている。
執刀医の天野篤順天堂大学教授は手術後の記者会見で、「手術は成功したのか」と問われて「今はまだそのことをいうべき時期ではない。陛下が日常生活に復帰したときに判断することだ」と答えている。その意味でいうなら、術後1カ月を経たいま、ほぼ、手術は成功したと言っていいだろう。
しかし、手術の経緯を改めて振返ると、検査の方法や手術方法に関して、医学的にはいくつかの疑問が残っている。(以下、敬語略)
疑問は、次の2点だ。
1. 検査でCTを使わず、造影検査を選択した理由
2. 手術でカテーテルを使わず、外科手術を選択した理由
まず検査方法についてである。
治療法選択の決め手となるのは、事前に行われる検査だ。検査の方法として一般的なものは
(1) 高性能のCTによる検査、
(2)カテーテルを使った造影検査
陛下の場合、2/12、造影検査が行われたと伝えられている。CT検査が行われたという報道はない。なぜか。
造影検査は、腕または足の付け根(鼠径部:そけいぶ)から細い管(カテーテル)を挿入して冠動脈に造影剤を注入し、レントゲンで撮影する。
これによって冠動脈のどの部分がどの程度狭まっているのかを確認することが出来るが、この検査によって陛下は、3本ある太い冠動脈のうちの「左冠動脈」から分岐した「左回旋枝」と「左前下行枝」と呼ばれる血管の2箇所に75%から90%の狭窄があることが確認できた。