今週の週末版は神奈川県知事の黒岩祐治さんのインタビューをお伝えする。灯台下暗しと言うが、その諺通り、静かにエネルギー革命が起きていた。やっぱり日本は地方自治が面白いし、こここそが成長センターだと思い知らされた。

川嶋 黒岩さんは神奈川県知事に就任されてから自然エネルギーに対して積極的に取り組まれていますね。もともと神奈川県庁で使う電力は東京電力から買っていないこともあり、電力に対して関心の高い自治体だったのでしょうが、黒岩さんになって自然エネルギー路線を疾走している印象があります。

原発事故直後「神奈川に4年間で200万戸分のソーラーパネルを」と訴え当選

黒岩祐治氏/前田せいめい撮影黒岩 祐治(くろいわ・ゆうじ)氏
1980年早稲田大学政経学部卒、同年フジテレビジョン入社。「FNNスーパータイム」や「報道2001」でキャスターを務める。自ら企画・取材・編集を手掛けた救急医療キャンペーン(1989~1991年)で第16回放送文化基金賞、平成2年度民間放送連盟賞を受賞。2009年にフジテレビを退社、国際医療福祉大学大学院教授を経て、2011年4月神奈川県知事に就任。(撮影:前田せいめい、以下同)

黒岩 神奈川県知事選挙は3.11の東日本大震災と、それに次ぐ東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きた直後に行われました。私はずっと以前から医療問題に深く関わってきたのですが、この事故が発生して、当面の課題は何と言ってもエネルギー問題だと選挙期間中から取り組み始めました。

 もっとも、原発事故が起きた当時は実は今ほど情報は明らかにされていませんでしたから、今みんなが思っているほど大きな事故が起きたという意識はありませんでした。

 ただ、どう見ても、あの原発がまた復帰してすぐ使えるとは誰も思わなかったということと、あの時起きた計画停電が下手するとずっとこれから先も続くんじゃないかというような状況の中で始まった選挙戦でした。

 選挙遊説に箱根へ行っても鎌倉に行っても、全然人がいないですね。箱根なんて、計画停電で人が来ない状態が続けば、確実に旅館はつぶれます。箱根の温泉街がバタバタつぶれたら、その波及効果はとても大きくて、そこに食材やら何やらを納入している企業は全部つぶれるのではないかと思いました。

 下手すれば夏を待たずに神奈川の産業が崩壊するんじゃないだろうかという危機感を持ったんです。だから、この問題をすぐに、早急に手当てしなければいけない。で、そのために一番早くできるのは何かと言ったら、これは「太陽光発電」だろうと考えたのです。

川嶋 自然エネルギーにも様々ありますが、太陽光発電を選んだ理由が何かあったのですね。

黒岩 ええ、これもある種の運命的なものを感じるんですが、私は別にエネルギーの専門家でも何でもなくて、たまたま友人に21世紀は太陽経済の時代だと言う人がいたんです。

 つまり、19世紀は石炭経済が花を開いた時代で、20世紀は石油が石炭に取って代わって石油経済の時代を迎えた。そして、21世紀は、原子力ではなくて太陽光を主なエネルギー源とする「太陽経済の時代」になるというわけです。

 私も友人の研究会に入って専門家の方々といろいろ検討していたものですから、よし、太陽光発電で神奈川県の経済を救うと同時に活性化させようと考えました。

 そして選挙中に、4年間で神奈川県に200万戸分のソーラーパネルを作るんだということを言ったんです。200万戸分というのは、神奈川400万世帯、そのうちの半分くらい作るという非常に大きな目標を掲げたわけです。

 恐らく、私が当選させていただいたのもこのことが大きく影響していると思います。