北米報知 2012年2月29日号

 シアトルセンター近くに拠点を置くビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(以下ゲイツ財団)の資料館が4日に開館した。一般無料公開で、財団の歩みから取り組みまで幅広く紹介、訪問者自身が米国や世界中の問題に対し意見や解決策を提案、共有できる施設となっている。

ゲイツ財団資料館「ファミリーファウンデーション」

 資料館は5つのコーナーで構成されている。1つ目の「ヴォイスコーナー」ではゲイツ財団の理事、スタッフ、団体支援者などの紹介が行われている。2つ目の「ファミリーファウンデーション」では、ゲイツ一家やゲイツ財団の歩みが年表形式で展示されている。

 ゲイツ財団の活動は、教育機会に恵まれない人のため図書館にウインドウズ搭載のコンピューターを提供することから始められた。また財団の世界規模の活動のきっかけとなった1997年のインド貧困の記事も展示されている。

 回転式パネルのほか、中央部の大型スクリーンには地球が映し出され、ロールを回すことで世界中におけるゲイツ財団やパートナーの取り組みの概要を知ることが可能だ。

 3つ目の「パートナーシップギャラリー」ではゲイツ財団とパートナーによる取り組みを紹介している。飢餓と医療問題に着目し、それぞれの問題を解決するため、全体を俯瞰(ふかん)し、問題の根本要素すべてを有機的に支援することが重要と訴えている。

 4つ目は「ムービーシアター」で、短編ドキュメンタリーで財団の取り組みを知ることができる。またスクリーンを通じたライブディスカッションも計画されている。

ゲイツ財団資料館「イノベーション&インスピレーション」エリア

 最後は「イノベーション&インスピレーションエリア」で、ローカル、グローバルな問題に対し、訪問者が様々な方法で解決策を提案できる。パネルで興味のあるテーマを選び、質問10項目に答えることで自分に適した活動分野を提示され、すぐ隣で自分の考えを文字や絵を組み合わせて作り投稿できる。図工コーナーは、年齢を問わず取り組めるよう工夫されている。

 2月4日の公開初日には約1000名が訪れたという。メリッサ・ミルバーン広報担当は、「この資料館を通じて多くの人に米国、世界の問題への関心を深めると同時に行動に移してもらいたい」と話す。

 文字、グラフィック、図工などアイデアを様々な形で発信し、他人と共有するシステムは、他の資料館ではなかなか見られない点ではないか。

 ゲイツ財団はワシントン州内で教育水準の向上やホームレス対策に取り組んでいる。教育面では幼少期に文字の読み書きや適切な行動を教えることから、高校生に進路相談や各科目の指導を行うなど幅広い。

 ホームレス対策では、長期雇用を獲得するため、専門分野における教育機会の提供や長期滞在可能な住宅の確保支援を行う。

 ゲイツ財団の資料館は世界でシアトル本部のみで、この機会に財団の取り組みだけでなく、ローカル、グローバルな視野を持ち、直面する課題に関わるきっかけを探ることができるのではないだろうか。

(記事・写真 = 兼崎 雄貴)

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