経済産業省で3月12日に開かれた「スマートメーター制度検討会」で、今年からスマートメーター(次世代電力計)の導入を始める方針が確認された。しかしその規格については、経産省が標準化を求めたのに対して電力各社が難色を示し、結論が出なかった。
これは地味な技術的問題のように見えるが、実は電力業界を揺るがす問題なのだ。
電力各社がバラバラに開発するスマートメーター
この夏に向けて、原子力発電所の再稼働が課題になっている。しかし電力の使用量は時間帯によって2倍近い開きがあり、真夏のピーク時を除けば発電所の能力は余っているので、時間帯によって電気代に差をつけてピーク時の料金を上げれば電力使用料が減り、停電を避けることができる。
深夜電力を使った給湯システムなどでは、こういう時間別の料金体系が採用されているが、一般の家庭ではできない。家庭にある普通の電力計は1カ月の電力消費量を積算して人間が検針するので、いつ使ったかが分からないからだ。
これを記録するためには、時間別の検針情報を電力会社に送信する機能を備えた電力計が必要になる。これをスマートメーターと呼び、イタリアやスウェーデンなどでは全世帯に配備されているが、日本ではほとんど導入されていない。電力を節約すると売り上げが減る電力会社が嫌ったからだ。
しかし震災と原発事故で電力不足が深刻になり、政府もスマートメーターを今後5年間で4000万台導入する計画を発表し、専用に980MHz帯の周波数を割り当てた。電力会社もスマートメーターの導入に乗り出し、実証実験を行っている。
ところが各社のメーターはまったく規格が違い、データも相互に読めないので、全国で10種類以上のスマートメーターがバラバラに配備されることになる。日本の携帯電話がよく「ガラパゴス」とからかわれるが、このままでは電力計は国内でさえ規格が統一できない「超ガラパゴス状態」になる。