ソニーについては誰しも一家言あるようだ。ソニーよりも歴史の古い会社、例えば三菱重工について語れ、と言われても語れる人は少ないに違いない。消費者に近い製品を扱っているということもあるが、ソニーは多くの人にインパクトを与えてきた企業だからだ。

 そのソニーの“凋落”が言われている。

 「ソニー製品には高品質で壊れないイメージがあった」と編集担当者に話したら、「ええっー、ソニータイマーという言葉に代表されるように『ソニー製品は壊れやすい』というイメージしかありません」と反論された。このギャップは大きい。

 「壊れない」というのは個人的な思い込みで、世間と大きくズレてしまっているのかもしれない。そう考えて、同年配、つまり50代以上の仲間が集まる機会があったので、その席で質問してみた。「ソニー製品に壊れないというイメージを持ってなかった?」

 すると、50代以上の全員が賛成した。壊れないというイメージがあったことは間違いない。そして、「高くてもソニー」だったのだ。

 ただしそれは、かつてのイメージでしかない。私も含めて全員が、「今のソニー製品は壊れるイメージだからな」との意見で一致した。

「ソニータイマー」という言葉が意味するもの

 まずは、「ソニータイマー」についてである。保証期間終了直後の故障が多いとの噂から、ソニー製品には一定期間が過ぎれば製品寿命がくるタイマーが埋め込まれている、という意味で使われるようになった造語だ。

 家電製品の需要で大きな比率を占めているのが「買い換え需要」である。絶対に壊れないICレコーダーだと、よほど革新的な新製品が登場してこない限り、消費者は新しいものを買おうとしない。事足りる、のだから余計な出費をする必要はないからだ。

 これがメーカーとしては困る。普及すればするほど、売り上げが伸びる可能性は小さくなってしまうからだ。

 消費者が飛びつくような新製品を次から次に出せればいいが、それほどメーカーの開発能力は高まっていない。そうなってくると、頼りになるのが買い換え需要なのだ。