龍の年である2012年の秋に、中国では共産党第18回党大会が開かれる予定で、そこでポスト胡錦濤の新しい政権の顔ぶれが決まる。
振り返れば、10年前に胡錦濤国家副主席(当時)の国家主席への昇格が決まった際は、中国国内のみならず、世界からもさらなる改革への期待が高まっていた。
しかし、その期待は大きく外れてしまった。胡錦濤・温家宝政権の9年間余り、中国経済は年平均9%超の成長を続けてきたが、経済改革も政治改革もほとんど着手されていない。
経済の自由化は進んでいるが政治改革が行われていないため、権力を握る共産党幹部の腐敗が横行している。2011年に摘発され、現在も取り調べを受けている劉志軍・鉄道省前大臣は、スイスの銀行口座に28億ドルの入金があったと中国国内のメディアが報道している。また、黄勝・山東省副省長は90億ドルの資金を着服したとして連行され、取り調べを受けている。
共産党幹部の腐敗を時系列的に見ると、年を追うごとに着服や収賄の金額は増加し、国民の1人当たりGDPの5000ドルに比べ、まさに天文学的に膨らんでいる。
なぜ共産党幹部は腐敗するのか。世界のどこの国でも政治は腐敗する傾向があるが、共産党一党支配の専制政治がとりわけ腐敗しやすいのは、権力を制約するメカニズムが用意されていないからである。
いまだに共産党批判は許されない
冷戦終結後、旧ソ連を含む東欧諸国は共産主義体制と決別し、国民の共有財産を国民全員に割り当てた。俗にショック療法と呼ばれる東欧諸国の改革は一時期大混乱をもたらしたが、民主主義の選挙制度が導入されたことで、混乱が徐々に収束するようになった。
一方、中国共産党は社会主義体制の堅持を諦めなかった。鄧小平が進めた「改革開放」政策はあくまでも中国独自の社会主義市場体制である。
中国の政治体制の特色とは何かについて、鄧小平はそれを明らかにしなかった。しかし、晩年の鄧小平の種々の発言を総合すれば、彼が考えた中国の特色とは、共産党の指導的立場を堅持するということのようだ。
「改革開放」政策以降の中国は経済が著しく発展したが、政府を批判する声も少なくない。だが、共産党を批判することはタブーとなっている。共産党を批判すれば、政権転覆罪に問われる恐れがある。