バンクーバー新報 2012年1月26日第4号より     

1 外務相、中国の宗教の自由に対する人権侵害を非難

 ジョン・ベアード外務相は、23日にイギリスで行った講演で、中国の人権侵害を痛烈に批判し、周りを驚かせた。

 「中国で、カトリック教神父や、キリスト教聖職者、信者などが強制捜査されたり、逮捕されたり、監禁されたりしているのを我々は見てきている」とベアード外相。法輪功やチベット仏教、ウルグアイイスラム教徒などへの脅迫なども例に挙げ、こうした行為はカナダの基本原則と価値観に反すると主張した。

 24日(現地時間)にも、ロンドンを拠点に活動するチベット独立を支援する人権団体「自由チベット」が、四川省カンゼ・チベット族自治州でデモ参加者2人が中国当局の発砲により死亡したと伝えたばかり。

 ベアード外相の広報官は、「大臣は、どんなに取り上げるのが難しい問題でも、必要とあれば相手が誰であれ問題提起すると以前から言っている。これもその一つだ」と語っている。

 同外相は、宗教の自由について取り扱う事務所を開設すると去年約束した。

 保守党はこれまで機会あるごとに人権問題を主張はしてきたが、最近は中国市場をカナダ経済回復のカギとして位置付けているため、徐々に中国の人権侵害問題には触れなくなってきていた。

 こうした背景があっての発言内容もさることながら、周りを驚かせたのはそのタイミング。来月第2週にはスティーブン・ハーパー首相が中国を訪問することが決定している。目的はカナダのオイルサンドの売り込みである。

 アメリカのパイプライン建設が中止となり、アジア市場、特に中国には大きな期待がかかる。そのために、アルバータ・BC州パイプラインをわざわざ推し進めているのである。

 今回の同外相の発言について、ハーパー首相、中国政府も今のところ公式声明は出していない。