世界選挙イヤー2012が幕を開けた。第1幕となった台湾総統選では馬英九現総統が再選を決めたが、何と言っても注目の的は、1月3日に火蓋を切った米国大統領選の行方だろう。
その長い長い戦いは、共和党指名候補争いから始まった。緒戦アイオワ州、第2戦ニューハンプシャー州と連勝した穏健派のミット・ロムニー前マサチューセッツ知事が勢いに乗ったかのように見えたのだが、それも束の間、アイオワ州はリック・サントラム元上院議員が勝利していた、と結果の修正が発表されたのだ。
大混戦の様相を呈してきた共和党指名候補争い
さらには、第3戦サウスカロナイナ州でニュート・ギングリッチ元下院議長が勝利し、以前はリバタリアン党候補でもあったロン・ポール下院議員を加え大混戦の様相。31日に投票が行われる人口全米第4位のフロリダ州で仕切り直しだ。
ところで、今回の候補争いで政策以外に注目を集めているのが宗教。もちろん、米国は政教分離をうたい、信教の自由を保証していることは言うまでもない。
しかし、過去44代を数える米国大統領の中で、プロテスタントではない者はジョン・F・ケネディしかおらず、そのケネディでさえ、当選を決めた時には賛否両論の大騒ぎになった、という事実をまず押さえておこう。
そこで、まず保守派から見てみると、リバタリアンのポール候補はバプテスト、つまりプロテスタントである。
ギングリッチ候補はと言うと、その紆余曲折の人生そのものに、バプテスト、ルーテルと変遷のうえ、現在はカトリック。そしてイタリア系とアイルランド系の血を引くサントラム候補は出自そのもののカトリックである。
一方の穏健派ロムニー候補だが、末日聖徒イエス・キリスト教会(LDS)、一般にはモルモン教と呼ばれているものだと聞けば、意外と言うより、ちょっと身構えてしまう人もいるかもしれない。と言うのも、キリスト教徒の一部には異端視する向きがあるからだ。
どう考えるにせよ、これまでの宗教非主流派が共和党の最終候補となる公算は大きい。そして、宗教の非主流派が人種の非主流である現職オバマ大統領に挑むという構図となるわけである。
もともと合衆国憲法で信教の自由が保障された後に生まれ、教義にも米国の国土に根ざしたものが少なくないLDSは、西部へと向かう開拓民の心の支えにもなったことから、フロンティアスピリットと関連づけられることも多い。