昨今、日本の不動産開発企業が次々と中国市場へ参入している。かつて見られた外国機関投資家による「さや取り目的」の不動産投資とは異なり、長期的視野を持ち、地に足を着けた不動産開発を目指す動きが加速化している。
調整が本格化する中国不動産市場において、日本企業が中国市場へ参入するチャンスになるとの見方も広がりつつある。本稿では、前・後篇の2回にわたり、住宅開発を中心とした日本の不動産開発企業の中国市場進出を振り返り、今後の動向を展望する。
日本人の生活を確保するための中国進出
過去の日本企業の中国不動産市場への進出を振り返ると、まず、中国に進出した日本企業の駐在員のために住宅を開発してきた歴史がある。
日本の不動産開発企業が手がけたのは、「日本の暮らし」をできる限り体現した、進出した企業の日本人駐在員が安心して暮らすための住宅である。
日本人駐在員向けの住宅には、駐在員からの需要だけでなく、慣れない生活から生じるリスクを軽減し、駐在員の安全を確保したい進出企業側の要望もあったに違いない。
日本の不動産開発企業が直接手がけた日本人向け住宅が見られるのは、上海、北京、大連、天津などの中国沿岸都市である。
このような日本人駐在員向けの住宅は、現在でも人気があり、ある程度の稼働率を維持している。中国国内で「日本基準」を体現するため、賃料は一般の賃貸住宅と比べても割高となる。
そのため、大手製造企業や金融関連企業など、比較的住宅予算の水準が高い駐在員が入居している。