オバマ大統領が1月5日の国防総省での演説で打ち出した米国の新しい軍事戦略が波紋を広げている。
その戦略はアジア・太平洋での防衛強化を主眼としているため、日本の安全保障への影響も大きい。また、そのアジア・太平洋重視のために、日本側では全体として歓迎する向きが多いようだ。
ところが肝心の米国では、このオバマ新戦略を、米国のこれからの国防や安全保障に重大な危機をもたらすおそれがあるとして強く反対する声があることを報告したい。しかも、その反対や懸念は、民主、共和両党に及ぶ超党派の反応なのである。
アジア・太平洋地域以外でも大きな脅威はなお存在する
オバマ新戦略への懸念は、まず大手紙「ワシントン・ポスト」の社説で表明された。1月6日付の社説で、「オバマ大統領の防衛戦略は根拠薄弱な前提に依存する」と題されていた。
ワシントン・ポストと言えば、民主党リベラル寄りの有力紙である。前回の大統領選挙でもオバマ候補を正面から支持した。そのオバマ政権寄りの新聞が、社説でこのオバマ戦略に反対を述べるのだ。日本にとって大きな意味のある同戦略の効用を考える上で、知っておかねばならない意見である。
ワシントン・ポストの社説の骨子は、次のようなものだった。
「米国のこれまでのいくつかの政権が、中東からアジアへの戦略重点のシフトを試みたが、いずれも中東での戦争、テロ、同盟国への攻撃、石油資源の危機などへの対策の必要性に迫られ、その狙いを果たすことができなかった」
「オバマ政権は、米国がテロとの戦いや民主主義の国づくりのために軍事力を使う必要がもうなくなるだろうという前提に立っている。だが、その前提の根拠は薄弱で、危険でさえある。アフガニスタンやパキスタンでの軍事情勢がその危機を物語っている」
「今回のオバマ戦略は、米軍地上戦力の大幅な削減が最大の特徴だが、イランや北朝鮮との戦争という可能性も排除できず、米軍地上戦力の削減はその点でも危険である」