プノンペン市内北部、小高い丘から市内を一望する仏教寺院ワット・プノン。
14世紀末に建立され、プノンペンという街名の由来となったとも言われるこの寺院は、カンボジアの首都プノンペンで最も歴史の古い寺院の1つであり、市内の人気観光スポットにもなっている。
このワット・プノン寺院を北端として、プノンペンの目抜き通りの1つ、ノロドム通りが、市を南北に貫く。
ワット・プノンからノロドム通りを南へ、カンボジア中央銀行と経済財政省関税消費税総局が通りを挟んで対峙するのを皮切りに、いくつもの官公省庁や各国大使館、大手金融機関オフィスが、この大通り沿いに軒を連ねている。
2008年、日本資本初の銀行を設立したマルハン
ノロドム通りを市内中心部に向かって南下すると、1953年フランスからの独立を記念に建立された独立記念塔に至る少し手前、プノンペン市内でも有数の一等地に、「MARUHAN JAPAN BANK」の赤い行名を掲げた建物が見えてくる。
前回の記事で書いたSBIが40%出資する日韓合弁商業銀行「プノンペン商業銀行(PPCB)」に先立つこと約3カ月。2008年5月22日に、「マルハンジャパン銀行(MJB)」がプノンペン市内に開業した。
開業当初は85%、現在は100%の株主として当行を立ち上げたのは、日本全国270店舗を超えるパチンコホールを展開する業界最大手であり、ボーリング場や映画館なども手掛けるアミューズメント総合企業、マルハンである。
現在も会長を務める韓昌祐氏が1957年に創業し、今では連結総資産約2900億円、連結売上高は2兆円を超え(2011年3月期)、マルハンの売り上げ規模はカンボジアの2010年国内総生産(GDP)の約3倍に匹敵する。
「パチンコ最大手のマルハンがカンボジアで銀行」と聞くと、まず穿った見方から入ってしまう日本人は少なくない。それを一番痛感しているのは、ほかでもないMJB自身である。
親会社の独特な存在感ゆえ、日本サイドからはいろいろと面白可笑しく取り沙汰されることも少なくないが、それら風聞や邪推に反し、MJBは極めて真っ当な商業銀行としての事業を展開している。
日本および欧米の一流銀行を渡り歩いた日本人を頭取に据え、日本人とカンボジア人混成の経営陣の下、元在カンボジア日本大使を社外役員に迎え、カンボジア現地企業に対する法人融資を中心に地域に根差した商業銀行を目指し、地道な取り組みを続けている。