マット安川 今の日本全体に対して現実として迫る危機や山積する問題を扱う時、現政権を批判するだけでいいのでしょうか。分析と予測、それに対する気構えまで、今回のゲスト・櫻井よしこさんは鋭く、分かりやすく説明してくれました。
歴史を重んじ、伝統的な祖国日本の再生を訴える凛とした姿に相対していると、国民一人ひとりが危機を認識し、それに負けない心と「誇りある危機管理意識」を持つにはどうしたらよいのだろう、と考えさせられました。
中国の示威行動を見過ごすな
櫻井よしこ 今年4月7日から9日にかけて、中国の艦隊が東シナ海の真ん中で軍事演習を行いました。あまり報道されていないことですが、これは重大な事件です。
フリゲート艦、駆逐艦などの中国艦10隻は、その後沖縄本島と宮古島の間の公海を抜けて沖ノ鳥島に向かいました。
海上自衛隊が護衛艦と対潜哨戒機P3Cで監視したところ、中国の軍用ヘリが護衛艦のマストぎりぎりまで近づいてきたといいます。日本政府はこれに抗議しましたが、中国は相手にしませんでした。
特に見過ごせないのは、10隻のうちの2隻が最新鋭潜水艦であり、それらがことさら浮上したまま公海を航行したことです。日本に圧迫感、恐怖感を与えようという中国側の意図は明らかでしょう。心理的に威圧されていれば、外交交渉の場で言いたいことを言えなくなってしまう。彼らの狙いはそこにあります。
私はマスコミがこの事件をどう報道するかに注目していましたが、どこも事実をサラッと伝えて終わりでした。意味するところを掘り下げる報道が全くなかったのは嘆かわしいことです。
怖がる必要ナシ。日本は中国に負けたことがない
中国の軍内部のメディアには、“中国は今後、心理戦、世論戦、法律戦の三戦を戦う” と書いてあります。心理戦の最たる例は今回、艦隊が行った軍事演習です。つまり外洋航行で強力な軍事力を見せつけるなどして、諸外国を心理的に圧迫する。
世論戦は中国のパワーを諸外国に印象づけると同時に、歴史問題などで正当性を主張し国際世論を味方につけようということでしょう。
そして法律戦。これは国際法や国内法を利用して自国に有利な状況をつくろうとするものです。いい例が1992年、中国が勝手に作った「中華人民共和国領海法及び接続水域法」(領海法)です。