1992年、新潟県で初めて産声をあげた地ビール。その後、北海道から沖縄まで雨後の筍のようにブリュワリーが誕生し、一時、その数は二百数十を数えるほどになった。
長野県佐久市小田井1119-1
しかし、地域や地方の活性と夢を掲げたクラフトビールは、限られた資本力と個性的な味わいのため、伝統的なラガービールの牙城に風穴をあけ切れないまま市場が縮小。
地ビールメーカーの中には撤退を余儀なくされたところも出ている。
限られた資本力に加え、汎用から離れた個性追求に力点を置き過ぎたたために、販路の拡大が阻害されるというマイナス要因を作り出してしまった。現在、日本の地ビール産業は青息吐息の状況に追い込まれている。
産業全体が青息吐息の中、快進撃続ける「よなよなビール」
ところが、そうした中でここ数年、前年比150%以上の成長を続ける地ビールメーカーがある。「よなよなエール」を世に出したヤッホー・ブルーイング(本社長野県軽井沢町)だ。創業から10年ほどの若い会社ながら、エールビールの国内シェアナンバーワンの地位に昇りつめた。
わずか数人のスタッフでスタートした事業所は、浅間山の伏流水に恵まれた長野県の佐久平高原に醸造所を構えている。希代のビール狂が造る「よなよなビール」は、今や国際的なビールの品評会で入賞するほど洗練されてきた。
「インターナショナル・ビア・コンペティション」(アメリカンスタイル・ペールエール部門)で金賞の栄誉に輝いている。それも8年連続というから、その技術が、いかに優れているかを実証している。
また、同社は早くからインターネット通販を重視、「楽天市場 ショップ・オブ・ザ・イヤー(マンス・ウィーク)」の洋酒ジャンルの常連受賞法人になるなど、評価は高まる一方だ。
エールビールって、どんなビール?
ヤッホー・ブルーイングが造るエールビールは英国では今も飲み継がれる伝統的なビールだ。しかし日本国内ではビール全体の販売量からみれば、わずか1パーセントに過ぎない。ビールに詳しい私の友人は “知る人ぞ知る” ビール通のビール、と説明する。
私も十数年前に英国旅行中に飲んだのが最後で最近は全く馴染みがない。そこでこのたび、改めて「よなよなリアルエール」が飲める東京都内のバー『ヘルムズデール』に出かけてみた。
シングルモルトの聖地といわれているバー。カウンターやテーブルに外国人客が目立っていて、私が昔、スコットランド取材旅行で立ち寄った酒場の雰囲気を彷彿させた。
この『ヘルムズデール』のオーナーが「よなよなエール」を絶賛したという話を聞いていた。「ぜひ、うちの店に置かせてもらいたい」というオーナーの一言から “知る人ぞ知る” このエールビールが権威ある賞を獲得するビールに成長していったという。
グラスに注ぐサービンはハンドポンプ式のビアエンジン。樽詰めの「よなよなリアルエール」は、この専用のサーバから人力で吸い上げられる。ホイップクリームのようなクリーミーな泡が琥珀色の液体を包み隠している。
グラスに口を近づけた刹那に果実のような香りが匂い立つ。口に含んだ初めての「よなよなリアルエール」は、ホップ特有の苦味と麦芽の甘みがはっきり区別できる。炭酸ガスの刺激を受けないために、あくまで、まろやかな口当たりだ。味覚と嗅覚に心地良いあと味を残してくれる。