英エコノミスト・グループが開催する国際的フォーラム「エコノミスト・カンファレンス ジャパン・サミット2011」 が、12月12日に開催された。
今年のテーマは「“現状維持”の代償」。エネルギー問題、財政再建、経済再生、人材育成、政治とリーダーなどについて、各界有識者の講演とパネルディスカッションが行われた。各セッションのリポートは来年の1月上旬にお送りする。
2012年、正念場を迎える日本
このカンファレンスの締めとなる最後のセッションでは、民主党政調会長の前原誠司氏が「2012年と新たなリーダー」をテーマに基調講演を行い、その後、安全保障、外交問題、日本がリーダーとなるためにはどうすればよいかなどを議論するパネルディスカッションにも加わった。
前原氏は基調講演で、アジア地域の繁栄と経済発展を支えるための安全保障について論じ、そのためには日米同盟の重要性がいっそう増していると述べた。また、講演の最後で日本にとっての2012年に触れ、来年は変化の年、正念場であるとの見方を示した。
閣僚経験者で政権与党の政調会長である前原氏の講演は、取材するメディアの数も多かった。
その晩、前原氏についてどのような報道がされるのか注目していたのだが、意外にも講演の趣旨である安全保障や日米同盟の重要性を取り上げたメディアはなく、講演の最後で触れたねじれ国会、来年の変化の可能性、そしてパネルディスカッションの中で話された靖国神社のA級戦犯合祀に関する発言の記事が並んだ。
msn産経ニュース 『民主、前原政調会長、靖国側は「A級戦犯」分祀を』 12月12日 19:48
時事ドットコム 『A級戦犯、自主的分祀を=民主・前原氏』 12月12日 20:15
NHK NEWSWEB 『前原氏"通常国会 状況で解散も"』 12月12日 20:58
YOMIURI ONLINE 『野党が審議拒否続ければ解散も・・・前原氏』 12月12日 21:18
毎日jp 『前原政調会長:消費増税議論応じぬなら・・・』 12月12日 21:59
その中で、ほかと違う部分を切り取ったのはasahi.com。『前原氏「日米中、正三角形でない」 小沢氏の持論批判』 12月12日 20:53
これは「古い友人」である米国との関係を重視するとした講演内容に関連してパネルディスカッションで発言したものだが、記事後半ではしっかりと来年の衆院解散・総選挙の可能性についても押さえている。
なお、上記の記事にはすべて「民主党の前原誠司政調会長が12日都内で講演し」と記されており、講演とパネルディスカッションを一括りのものとして扱っている。
解散総選挙などの政局については、このカンファレンスの場でなくとも取材できるのではないかと訝しく思うが、日本や外資系企業のエグゼクティブや学者が聴講する場での発言であることが重要なのだろうか。
ちなみに靖国の件については、中国、北朝鮮、韓国との関係で外交上長く尾を引く問題として、パネルディスカッションのモデレーターの問いかけに前原氏が答えたものである。
前原氏には気の毒だが、各メディアは基調講演の主張とは異なる部分にニュース価値を見出したようだ。
しかし、次世代のリーダー候補である前原氏の日米同盟重視の考えについて、改めて耳を傾けるのもいいだろう。以下に基調講演の全文をご紹介する(パネルディスカッションの内容は来年1月のリポートでお届けします)。