マット安川 新聞その他マスコミの報道では賛否両論ですが、どちらかといえば皮肉が目立つ新党「たちあがれ日本」。
浅川さん曰く「本人たちこそ立てるのか」などといった揶揄は的外れで、実は一番期待できるそうです。確かに今は、鳩山政権の明日を占うよりも、眼前の日本の危機的状況をどう乗り切るかを論ずべき時です。
長年の政界取材で歴史と現場を知り尽くした浅川さんが、政治家に求められるものを何と説くのか、お楽しみください。
参院選で民主が負ければ大規模な政界再編が?
政治評論家 『小沢一郎 独走す』(東洋経済新報社)など、著書多数
(撮影・前田せいめい、以下同)
浅川 今まさに窮地に追い込まれている鳩山(由紀夫)総理ですが、私の見るところ彼は自分でそうした状況をつくっていると思います。
元々がお坊っちゃまだからか、人の話を聞き過ぎる。八方美人は八方塞がりを招くという典型例でしょう。自分の意思で閣僚を動かす、黙らせるということがなさ過ぎます。
特に、普天間飛行場移設問題のように外国が直接関わるテーマに関しては、もっとしっかり手綱を締めないといけません。
沖縄返還問題が持ち上がった時、当時の佐藤栄作総理が厳格な箝口令を敷いて情報が外に出るのを防いだことに学ぶべきです。閣僚が個人的な考えをしゃべりすぎると、まとまる話もまとまらなくなります。
16年ぶりに自民党から政権を奪った彼らですから、いきなりすべてうまくやれというのは無理な話です。国民もマスコミも、もっと長い目で見てあげるべきだとは思います。しかし、もはや支持率が30%を割ってしまった民主党政権は、確実に危険水域に差しかかっている。
参院選で過半数を確保できる可能性はまずありません。結果として生じる衆参のねじれが、大規模な政界再編の呼び水になるのではないかと見ています。
志を感じる平沼新党「たちあがれ日本」
ここに来て新党の旗揚げが相次いでいるのは、その予兆と言えます。中でも重要なカギを握りそうなのが「たちあがれ日本」です。
平均年齢の高さばかりがやり玉に挙がり、“シルバー新党” などと揶揄されていますが、彼らも言った通り、重要なのは年齢ではなく志があるかどうか。そして「たちあがれ日本」にはそれがあると感じます。
いい例が自主憲法制定、消費税引き上げといったことを率直に論じていることです。有権者に対してストレートに訴えるとなると少々腰が引けるテーマ、しかし政治家として避けて通れない大問題に、正面から立ち向かっている姿勢は評価できます。
否定的に見られがちな彼らの年齢ですが、プラス要因と捉えてもいいのではないでしょうか。平沼(赳夫)さんにしても与謝野(馨)さんにしても、国会議員として積み重ねた実績があって今がある。過去の豊富な経験に照らして日本の未来を展望している方々の主張には、重みがあります。
「日本創新党」について言えば、地方の首長連合だけに “全国区” ではないのが弱みです。大政党を百貨店に例えるなら、地方主権といった問題に特化した専門店なのでしょうが、今のところ方向性がよく見えないのも不安材料。
第3極として存在感を発揮するには、「みんなの党」のように政策理念をもっと単純明快にした方がいいと思います。