今年の漢字に「絆」が選ばれた。未曾有の大災害に見舞われ、いかに人間的つながりが大切なものか、改めて自らに問い直した人が多かったということなのだろうが、今年はグローバリゼーション進む現代社会で、知らず知らずのうちに世界はつながっているのだ、と感じさせることが多い1年でもあった。

タイの洪水で価格が跳ね上がったHDD

イーストウッド監督最新作『ヒアアフター』、NY映画祭でクロージング上映

ニューヨークの映画祭で上映された「ヒアアフター」手前が監督のクリント・イーストウッド〔AFPBB News

 10月半ば、私は、発売になったばかりの映画『ヒアアフター』(2010)のDVDを見ていた。

 東日本大震災前から劇場公開されていたクリント・イーストウッド監督の最新作で、冒頭にタイでの津波シーンがあることから、震災後、自粛により上映中止となり、未見だった作品である。

 それから1週間後、そのタイから、7月から続いていた洪水が悪化、工場の浸水被害が甚大なものとなっているとのニュースが入ってきた。

 自動車部品やコンピューターのハードディスクドライブ(HDD)の供給に問題が出そうだというのである。ちょうどバックアップ用のHDDを調達しようと考えていた私は、早速秋葉原に出向いた。

 2テラバイト(TB)の3.5インチHDDは底値よりやや高い6000円弱だったので早速購入。店員は「あるうちはそんなに高くなりませんよ」と言っていたのだが、2週間後には2万円弱まで跳ね上がってしまったのである(今は1万円程度)。

世界中から中国に集められた屑の山

 不作豊作のある食物ならともかく、工業生産される消耗品の価格は時が過ぎれば下がるのが当たり前、と勝手に思い込んでいた身には実に新鮮な経験だった。

 東日本大震災後、部品不足で自動車業界が大変なことになっていると聞いてもピンとこなかった私が、初めて「サプライチェーン(Supply chain)」の現状を意識した瞬間でもあった。

 「サプライチェーン」とは、ある製品が原料から製品となり消費者の手元に届くまでの過程を言うのだが、今やそれは地産地消どころか、1国内で済ますことさえできない時代となっている。

 カナダの写真家エドワード・バーティンスキーがその原題が示す「工業化された世界の姿(Manufactured landscapes)」を撮り続ける様を描いた映画『いま ここにある風景』(2006)を見れば、それは世界の工場であり資源大国でもある中国とて変わらないことが分かる。