米AT&Tによる米TモバイルUSAの買収計画に異を唱え、訴訟を提起している米司法省(DOJ)が、裁判の延期、あるいは訴訟の取り下げを裁判所に要請していると米ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアが伝えている。

 司法省はこの裁判を長引かせるか中断するかして、結論が出ないようにすることで、AT&T側が米連邦通信委員会(FCC)から承認を得られず、買収が失敗に終わると考えている。米ブルームバーグは11日付の電子版で「AT&Tは思わぬしっぺ返しを食らったようだ」と報じている。

司法省、「提訴はFCCへの承認申請が前提だった」

AT&TのTモバイル買収、米司法省が阻止へ

ワシントンDCのビルにかかるAT&Tのロゴ〔AFPBB News

 メディア報道によると、司法省反トラスト局のジョセフ・ウェイランド副司法次官補が米連邦地裁判事に対し、裁判の延期の意向を既に伝えており、判事はこれに関して12月15日に審問を行う予定。

 AT&TによるTモバイルUSAの買収計画を巡っては、司法省が独占禁止法違反に当たるとして訴訟を提起している。

 一方でFCCも聴聞会を開く意向を示すなど買収阻止に向けた動きを見せたため、AT&TとTモバイルUSA親会社のドイツテレコムは「司法省との訴訟に注力する」ことを理由に、FCCへの認可申請をいったん取り下げた

 司法省との訴訟に勝訴し、この買収が独禁法違反に抵触していないことのお墨付きをもらった後、改めてFCCに承認申請を再提出し、滞りなくFCCの認可を得る――。これがAT&T側の「戦術」と見られている。

 しかし、司法省側は「そもそも我々が提訴したのは、AT&TがFCCに認可申請したことが前提になっている」とし、「申請が取り消された今となっては、裁判を急ぐ理由がなくなり、AT&T側が再びFCCに認可申請するまで訴訟をいったん取り下げるべきと考えた」と説明している。