12月は「戦いの月」だ。開戦記念日や赤穂浪士の討ち入りがあるからではない。12月は、予算を巡って熾烈な「戦い」が繰り広げられているのだ。防衛省でも夜遅くまで担当者が作業にあたり、財務省との調整が行われている。
そもそも自衛隊が対峙すべきは、わが国を脅かす敵である。予算獲得のために優秀な人材を充てて疲労困憊させることは国益に適うとは思えないが、この構図は相変わらずのようだ。
震災の教訓はどこへ行ったのか
今、私がとても残念に思っていることがある。いろいろなところで自衛隊の組織力について書いたり、話をしてきたと自分では思っていたが、実は世の中にあまり伝わっていなかったということだ。
未曽有の災害派遣となった東日本大震災で、自衛隊が大きな成果を残すことができた要因には、これまで「辛抱強く」培ってきた自衛隊の自己完結能力があった。
その能力が、被災地での給食支援や駐屯地への被災者受け入れなども可能にしたのである。自衛隊を構成する「人の力」がいかに大事か分かった・・・、はずであった。
ところが、政府の防衛費に対する認識は相変わらず厳しいものがある。結果的に震災の教訓も、これまでの流れに歯止めをかけることにはならなかったのだ。
例えば、陸上自衛隊の糧食はこれまで隊員が作っていたが、アウトソーシング化が進められ、給食の能力については野外訓練で担保する方向性だった。
しかし震災が発生してみると、委託している業者は機能不全に陥り、駐屯地などに来ることすらできないという状況となってしまったのだ。
こうしたことから、何らかの見直しがなされてしかるべきと思ったが、早くもこの教訓を忘れ、いや、震災時の涙ぐましい様子も全く意に介されなかった。