同年秋には、投資会社ブレイクアウェイ・ベンチャーズから500万ドル(約4億6500万円)のサポートを得て、経営を軌道に乗せる準備は万端となった。同投資会社は支援を継続している。

 創業した3人は、現在は既にトップの座を退いている。これまで2つの起業に成功した経験豊かなフィル・ダミアノをCEOとして迎えた。「成功し、そこからさらに発展していくためにチームを作って経営していくことは、初めから3人で決めていました。僕たちだけではできないと分かっていました」とニューマンは言う。

 3人は社員として、各自の興味に基づき、同社で最も強化すべき領域に従事している。ゴーシャは製品開発、アヴァロンは経営発展、ニューマンは国外マーケットの担当だ。

若い起業家コンテストで第3位入賞

 世界中に読者を持つビジネス情報誌「ビジネスウィーク」は、毎年25歳以下の起業家のためのコンテスト「ヤングアントレプレナーズ」を開催している。アイデアペイントは、2009年大会で600以上の応募の中から読者投票で第3位に入賞した。

壁一面が巨大キャンバスになる

 3人の製品は短期間で高い評価を受けてきたが、もちろん、この幸運は約束されていたわけではない。

 それでも3人がチャレンジできたのは、アメリカでは社会が若者の起業を歓迎し、後押しする風潮があるからかもしれない。

 ニューマンは、以前、大学の教授から受けたアドバイスを今も心に留めている。「たとえ起業に失敗しても、その後のキャリア全体からみれば影響は少ない。失敗から学ぶことで、もう一度起業した時に、又は将来の仕事で成功するチャンスをつかみやすくなる。リスクを予測しながら突き進め」

 この言葉は、少々慎重すぎる日本の若者にも参考になるのではないだろうか。

エコを意識した点も、人気の秘密

 アイデアペイントが人気を集める理由は、エコ商品だという点にもある。

普通のペンキと同じように塗るだけ。2度塗りはいらない

 オフィスや学校で使っている黒板やホワイトボードは消耗品だ。そこにアイデアペイントを上塗りすれば、新しいホワイトボードに生き返り、使える期間が延びる。5~10年の耐用年数が過ぎたら、もう一度アイデアペイントを上塗りすれば、さらに寿命が延びる。

 ゴミの低減につながる上に、費用も少なくて済む。全教室の黒板をアイデアペイントでホワイトボードに変えたミシガン州の小学校では、ホワイトボードを新規に購入した場合と比べて75%以上も費用が節約できたそうだ。

 「自宅でも使いたいけれど、賃貸住宅だから・・・」と気になる人も心配は無用。退去時、アイデアペイントの上に元の壁の色のペンキを塗ればいいのだ。ちょっとしたメモや、子どもが絵を描くための紙の使用も控えられるはず。