サムスンの新しい携帯電話シリーズ「ウェーブ」

サムスン電子の新型携帯シリーズ「ウェーブ」。サムスンは、携帯電話、液晶テレビなどで世界シェア拡大中だ〔AFPBB News〕

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 韓国製品を実質的に締め出してしまった日本は、それらがめきめきと実力をアップしていることに気付くチャンスも逸した。世界市場でのシェア拡大に「いつの間にそんなに成長したのか」というのが、日本人の一般的な受け止め方ではないだろうか。

 こうした韓国企業躍進の背景に「経営スピード」の早さを指摘する声がある。韓国の経済専門家は「韓国はオーナー企業が多く、トップダウンで即断できる。サラリーマン社長が主体の日本では下から積み上げていくので決断が遅い。韓国企業はとりあえず行動を起こそうとするが、日本企業は慎重で決定までに時間がかかり、非効率的だ」と意思決定をめぐる構造的な違いを指摘する。

ピンチにもひるまないチャレンジ精神

 トップダウンを象徴するのは、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設計画だ。受注をめぐる動きだ。李明博大統領自らが2009年末に急遽UAEに飛び、ハリファ大統領との直談判に臨んだ。その甲斐あって、事前予想を覆して韓国の官民一体の企業連合が日米仏を抑え、400億ドル規模の受注を獲得した。

現代自の高級セダン、米での成功は未知数

現代自動車は米国や中国市場で攻勢をかける。日本では、ヨン様ブームにあやかった中型乗用車「ソナタ」もヒットしなかった・・・。写真は高級セダン「ジェネシス」〔AFPBB News

 また、「ピンチをチャンスに変えよう」と、リスク投資を避けない傾向も強い。1990年代後半の経済危機で国際通貨基金(IMF)の管理下に入ったにもかかわらず、逆にそれを利用してインターネット環境を整備し世界有数のIT大国になったのがそのよい例だ。

 現代自動車は米国で金融危機を逆手に取り、「1年以内に失職すれば返品可能、ローンも免除する」という思い切った奇抜な販売戦略でシェアを大幅に伸ばした。

 インドでは韓国企業が現地事情に合わせた製品を販売し、地元に受け入れられた。停電が頻繁に起き、水害も多いなどインド特有の事情を勘案、単なる既製品の輸出ではなく、独自の洗濯機や自動車などを開発し、業績を伸ばした。広告戦略も巧みで世界各地で韓国の「ブランドイメージ」を高めており、日本製品よりも清新なイメージを与えている。