70年前の今日12月8日(米国時間では7日)、ハワイの地から日米の戦いは始まった。節目となる今年、真珠湾攻撃に至るまでの微妙な駆け引きを描いた日米合作映画『トラ・トラ・トラ!』(1970)の脚本がネットで公開される。

黒澤明が描きたかった山本五十六像

ハワイ 真珠湾のアリゾナメモリアル 戦没者名の書かれた壁

 「今さら40年前の映画の脚本なんて」と思うかもしれないが、この脚本、その内容はもとより、ハリウッドシステムと日本映画界との違いなど様々な壁にぶち当たり、途中降板してしまった巨匠黒澤明監督の手がけた「オリジナル」。

 その後手を加えられ映画は完成したため、世界に向けて黒澤が発したかった山本五十六像というものを知ることができる貴重なものなのだ。

 その山本五十六は、歴史教育の甲斐あって(?)、米国人にとっては卑怯にも「先制攻撃」という奇襲を仕かけた存在と認識されている。

 実際には攻撃の開始までに様々な駆け引きがあり、それほど単純なものではないことは『トラ・トラ・トラ!』にも描かれているのだが、そんな米国人の主張を肌で感じることができるのが真珠湾にあるアリゾナ・メモリアルの数々の展示物。

 しかし、沈没した戦艦アリゾナの真上に立つ堂々たる建造物の壁に記された数多くの戦没者名を見ていて、日本人が思い出すのは広島や長崎の原爆死没者慰霊碑である。

謎多きテロの首謀者を調べもせず殺害した米国

 もちろん、現代の米国人だったら、ニューヨークのグラウンド・ゼロに名前の記された「ヒーローたち」を思い浮かべることだろう。

 初めて本土攻撃を受けたことから真珠湾以来の「屈辱の日」とされ、米国に衝撃が走ったのが9.11同時多発テロ。その首謀者ウサマ・ビンラディンを、今年5月になって米国はようやく探しあてたのだった。

 ところが、10年近く世界中に恐怖をばらまき謎も多かった人物をやっとのことで見つけたと思ったら、大した抵抗もしていない(と言われている)のにあっさり殺してしまったというのだから国際社会は当惑した。

 さらに、それがパキスタン政府の許可も得ずその領内で行われた作戦だったため、国家主権の侵害という問題まで引き起こしてしまったのである。