過去の損失隠しが発覚、株価も信用も地に墜ちたオリンパス。前回のコラム「『損失隠し』はオリンパスだけなのか」で、違法行為に手を染めた企業は同社だけでなく多数に上る公算が大きいと指摘した。

 今回は「飛ばし」に関わった関係者の証言をもとに、その手法を分析する。

 各種報道によれば、オリンパスは損失隠しを実行したあと、かえってその額が膨らんだとされる。多くの読者にとっては首を傾げるような話かもしれないが、筆者にはこれが当然の成り行きだと映る。損失飛ばしの中身は、危険極まりないものばかりなのだ。

外資系証券会社が配布した「極秘」プレゼン資料

 <顧客は確定利回りの私募債を保有中だと安心しているが、その中身は完全なるブラックボックスだ。>

 これは1999年2月、筆者に送られてきたメールの一部だ。送信者は「飛ばし」の事情を深く知る当時の欧州系信託銀行の幹部。

 筆者がその幹部とメールをやりとりしていた時期は、企業が保有する有価証券等の金融資産について、取得時の価格(簿価)ではなく、時価で計上する「時価会計」が導入される直前のタイミングに当たる。オリンパスのように、バブル期に財テクに邁進した企業の多くが多額の含み損を抱え、四苦八苦していた時期とも重なる。

 財テクの失敗で積み上がった多額の損失を計上すれば、厳しく経営責任を問われる。できればこれを表面化させず、時間をかけて回復させる手立てがないものか。多くの財務担当者が頭を抱えていた時期、デリバティブ技術に秀でていた外資系金融機関が多種多様な「飛ばし」のスキームを提示した。

 その一例は次のようなものだ。これは「財テク企業」を顧客に持つ日本の証券会社の営業担当者向けに配布された、米系証券作成のプレゼン資料の一部だ。飛ばしの需要があれば、「ウチに紹介してほしい」という意味合いを持つ。