2年前日本輿論を襲い、日中間の懸案となり続けた中国製冷凍毒ギョーザ事件が動いた。日本時間の26日夜11時51分(現地時間10時51分)、国営新華社通信が、「対日輸出ギョーザ中毒事件を解決」という見出しで、同ギョーザの製造元である「天洋食品」の元臨時従業員・呂月庭容疑者(36)逮捕の一報を伝えた。
独自取材すれば待っている厳罰
北京日本大使館幹部も中国外交部に呼ばれて通告を受けた。内容は新華社報道とほぼ同じだったという。事件の事情に詳しい日本政府関係者は「全く予想していなかった。驚いた」と筆者に語る。突然の出来事だった。
新華社の報道は他のネットメディアにも転載された。タイムラグはほぼ皆無であった。
翌日の各紙朝刊でも同報道が転載された。北京の都市報《新京報》は一面で「対日輸出毒ギョーザ事件、2年間の捜査を経て、天洋食品工場の臨時工が工場への報復を目的に毒を投じていたことが判明」と軽く掲載、中面の12ページで紹介している。
紙媒体、ネットメディアを問わず、全ての国内メディアが新華社の記事を転載するにとどまった。社説や評論もない。あるとすれば、タイトルを多少いじる程度である。
プロパガンダを担当する当局の幹部は、「高度に政治的、かつ敏感な問題だ。各メディアは新華社の原稿を使うように指示している。皆言われなくても分かっている。独自取材や報道をした場合にはそれなりの処罰が下される」と筆者に事情を説明してくれた。
次の日には消えていた「餃子」の文字
容疑者逮捕のニュースに対し、日本の鳩山由紀夫首相や岡田克也外務大臣は「感謝」「評価」「期待」のコメントを返した。中国メディアは「待ってました」とのごく、「日本の首相が中国側に謝意表明」「日本側が中国政府の努力に敬意を表した!」などのタイトルで、27日、トップページの目立つ位置を飾った。
しかし、盛り上がりも1日限りだった。「徹底抗戦」を試みる日本メディアとは異なり、報道規制を伴うこの手の案件に、中国メディアはすぐ冷めてしまう。
案の定、28日、ネットメディアのトップページで「餃子」の2文字はほぼ見られなくなっていた。某新聞紙の幹部は、「独自報道が許されない案件を2日続けて扱うほど俺たちも落ちぶれちゃいねえよ」と溜まったストレスを露わにする。