世界経済の中核は、モノとマネーの双方において引き続き米国が占めているものと、筆者は認識している。しかし、BRICsに代表される新興経済諸国の重みが徐々に増していくのが時代の流れであることも事実である。米国の株式市場が中国の預金準備率引き上げで動揺したり、米国の債券市場が中国やロシアの売買動向を材料にして不安定化したりするなど、マーケットの世界でも新興経済諸国の政策動向をウォッチする必要性が増している。

 実際、3月9日の日経新聞(東京・14版)で、海外の経済ニュースが報じられる国際2面(9ページ)を見ると、「中国、消費財値上がりインフレ懸念、一段と」「『不動産急騰阻止へ監視強化』中国建設相」「利上げ時期巡り人民銀副総裁『物価上昇、重要な指標』」「新車販売インド2月43%増金利上昇傾向、伸び悩みも」といった記事が並んでいる。

 BRICsを構成する4カ国の金融政策について、筆者なりに簡単にまとめてみると、以下のようになる。

【ブラジル】

 ブラジル中央銀行は、1964年に設立された。COPOMと略称される金融政策委員会を定期的に開催して、金融政策を決めている。主要政策金利はSELICと呼ばれる金利(国債を担保とした銀行間取引金利)で、現在は8.75%。世界的な金融危機と景気悪化がブラジルにも波及してきたため、2009年1月から利下げを開始。13.75%から計5%下げたところで利下げを停止し、その後は据え置きを続けている。2月24日、ブラジル中央銀行は預金準備率の引き上げを決定。4月9日から定期預金の準備率を13.5%から15%に引き上げるなどの措置で、710億レアルの資金吸収を意図するもの。次の動きは利上げと予想されている。

【ロシア】

 ロシア連邦中央銀行は、1990年に設立された。通貨ルーブルが暴落してインフレが加速したことを受けて、1993年10月には主要政策金利であるリファイナンシング金利(公定歩合)を210%まで引き上げたことがある。同金利は現在、8.5%。BRICsの中で、ロシアは2009年にマイナス成長を記録した唯一の国であり、景気テコ入れのため中央銀行は利下げを継続。2009年初めに13.0%だったリファイナンシング金利は、2009年4月から2010年2月までの11回連続の利下げで、計4.5%低下した。