米中新冷戦なのか。

 ついそんなことまで思わされる米国防総省の発表だった。11月9日のことである。

 前回のこのコラムでは、オバマ政権のアジア再重視の新軍事戦略についてリポートした。その後に国防総省は、そのアジア重点の新戦略を極めて生々しい軍事態勢の強化として公表したのだった。

 この戦略は「空・海戦闘」と呼ばれる。中国の軍拡の脅威に米国がついに正面からその抑止策を取ることを宣言した、と言える。

米中両国の安全保障関係は新時代へ

 米国防総省は11月9日、報道陣に対して、「空・海戦闘」戦略の構築と、そのための新たな「空・海戦闘局」の開設を公表した。

 この措置は、中国が明らかに米軍を対象に新しい兵器を配備し、戦術を発展させていることへの抑止策として、中国の主要拠点を空と海から、さらにはサイバー攻撃や宇宙戦略によって反撃を加えられる能力を高めるという骨子だった。この新戦略により米中両国間の安全保障関係は新時代に入るとも言える。

 この動きを奇異に感じる向きもあるだろう。米国と中国は貿易や金融という面で密接な補完関係にある。対テロ闘争や大量破壊兵器拡散防止では、協調の態勢をも保っている。だが、それでも中国は明らかに米国を主目標としているとしか思えない一連の軍事措置を取り、総合的な軍事能力を高め続けている。米国敵視と見るしかない動きである。このあたりが米中関係の複雑さのエッセンスだろう。

 米国は、中国の戦力全体の増強を懸念している。個別の軍事動向としては、例えば以下のようなことがある。

・中国は米側の人工衛星を標的として想定する衛星破壊ミサイルの実験を断行した。

・中国軍は、台湾有事などで米軍部隊の接近を阻む「接近阻止」策を強調し、そのために米側の空母などを標的とする対艦弾道ミサイルを開発した。

・初の空母の配備に加え、新鋭のステルス戦闘機の開発に乗り出している。

・米軍の中枢へのサイバー攻撃を頻繁に実行している。

・南シナ海や東シナ海で増強した軍事力を誇示して、周辺諸国を威嚇する行動を取る。