インターネット電話サービス最大手のルクセンブルクのSkype(スカイプ)と米携帯電話サービス最大手のベライゾン・ワイヤレスが提携を発表し、話題を呼んでいる。

日本では認められていないスカイプの携帯電話利用

米ベライゾンがオールテル買収、AT&T抜いて全米首位に

米ワシントンD.C.にあるベライゾン・ワイヤレスの店舗〔AFPBB News

 スカイプは専用ソフトをインストールしたパソコン同士で無料で音声通話が行えるというインターネットサービス。両社はスマートフォン向けスカイプアプリケーションを共同開発し、ベライゾンの顧客がスマートフォンからインターネット電話を利用できるようにすると発表した。

 実はスカイプのアプリケーションは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」向けも既にあり、日本でもアップルのアプリケーション配布サービスから無償でダウンロードできる。ただし、スカイプが使えるのはiPhoneが無線LAN(Wi-Fi)でインターネットにつながっている時に限られる。

 屋外など無線LAN環境がない場所で、携帯電話会社の通信網を介して利用するというわけにはいかないのだ。これは、通信事業者が制限をかけているからだ。米国ではiPhoneの通信事業者である米AT&Tが、日本ではソフトバンクモバイルが、スカイプの電話網利用を認めていないということになる。

 これは当然と言えば当然の話である。通信事業者にすれば、通話料が入らなくなるうえデータ通信量が増大してしまう。通信インフラの費用が回収できなくなるばかりか、ビジネスそのものを脅かす存在だ。ではなぜベライゾンは提携に踏み切ったのだろうか。

「自由競争」と「「ネットの中立性」

 米ニューヨーク・タイムズの記事では「ネットの中立性」という観点から今回の提携について報じている。

 米グーグルや、米ヤフー、米アマゾン・ドット・コムといったネット企業の膨大なコンテンツが日々インターネットに流され、ユーザーはそれらを自由に利用している。これに対し、インフラ整備に膨大な費用を投じてきた通信事業者が、こうしたネット企業やユーザーに対し、費用の一部を負担するよう主張し始めた。「ネットの中立性」はちょうどこれに反対する形で提唱された。その趣旨はこうだ。

 「ネットは誰でも自由に使えるオープンなものであるべき。通信事業者が、コンテンツやアプリケーション、サービスを差別し、遮断したり品質を落としたりすることは、競争と、通信の自由というインターネットの原理を阻害する。ユーザーが自由にインターネットを利用する権利を妨害してはならない」