バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が証言する予定だった下院金融サービス委員会公聴会は大雪のために延期されたが、証言原稿は予定通り10日に公表された。題名は、「FRBの出口戦略(Federal Reserve's exit strategy)」。金融危機対応で発動した様々な金融支援措置を解除し、金融政策を正常化していく道筋について、従来よりも具体的なコメントが発せられた。
バーナンキ議長は、超低金利に付加されている「より長い期間(for an extended period)」という表現の時間軸の存在を、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文と同様の表現で確認した。しかし、「いずれ、景気が十分に拡大した際には、FRBはインフレ圧力の増大を防ぐため、金融環境を引き締め始める必要があるだろう」として、具体的なツールに言及。流動性低下などからFFレートの指標としての信頼性が低下している間は、短期金利をコントロールする手段として、準備預金付利金利(現在0.25%)の引き上げが柱になることが示唆された。すでに一部の地区連銀総裁が言及していた話であり、米欧経済紙の観測報道にも登場していた話であるため、意外感はない。一方、膨れ上がった超過準備を吸収する手段としては、リバースレポや、ターム預金、買い入れたMBSの緩やかなペースでの売却が挙げられた。
また、バーナンキ議長は、「FRBは通常の公定歩合による窓口貸し出しの条件を正常化するプロセスにある(the Federal Reserve is in the process of normalizing the terms of regular discount window loans.)」と明言。貸し出しを受けることのできる最大期間はすでに90日から28日に短縮されたが、さらなる短縮を検討する、とした。さらに、「近いうちに、われわれは公定歩合とFFレート目標水準とのスプレッドを若干拡大することを検討する見通しだ(before long, we expect to consider a modest increase in the spread between the discount rate and the target federal funds rate.)」と述べた。FFレートは「時間軸」に沿って動かないので、この発言は、現在0.5%に設定されている公定歩合(プライマリークレジット金利)の引き上げを近く検討するということである。
市場の過剰反応を警戒したのか、「これらの変化は、今月初めにFRBによる多くの貸し出しファシリティーが打ち切られたことのように、金融市場の状況が改善したという観点からのFRBによる貸し出しファシリティーのさらなる正常化だと見なされるべきである」「それらが家計や企業にとっての金融環境引き締めにつながることは想定されておらず、金融政策見通しにおける何らかの変化のシグナル発信だと解釈されるべきではない。金融政策見通しは、1月FOMC時点のそれと、ほぼ同じままである(they are not expected to lead to tighter financial conditions for households and businesses and should not be interpreted as signaling any change in the outlook for monetary policy, which remains about as it was at the time of the January meeting of the FOMC.)」と、バーナンキ議長は強調した。
しかし、市場はこのバーナンキ議長による公定歩合引き上げ検討発言を、利上げの前触れではないかと警戒的に受け止め、10日の米国市場で株価が下落する一因になった。米国債利回りは中期、長期ともに上昇した。