スウェーデンは総選挙の年を迎えた。結果次第では、この国の歴史の教科書に新たな1ページが加わるかもしれない。国政に議席を持つ7つの政党が、史上初めて左と右の2大陣営に分かれて連立を形成した上で、激突することになったからだ。
これまでの選挙では、社会民主労働党が単独で「大きな政府」の代表として、「小さな政府」陣営(穏健党、自由党、キリスト教民主党、中央党)連合と争ってきた。近年は左翼党(旧共産党)と環境緑の党が社会民主党に閣外協力し、政権維持を支えていた。
しかし今回は、この閣外協力という伝統が崩れて左寄りの3党が連立し、左派連合(赤と緑で「レッド・グリーン連合」と呼ばれる)が成立することになった。
スウェーデン政界も、英米型の2大政党制に変貌を遂げるかもしれない。社民党がほぼ単独で長期政権を担い、福祉大国の基礎を築いてきたが、政治においてはその「スウェーデン・モデル」はもはや終焉したと言えよう。
2010年9月の総選挙で、4年前の雪辱を目指して政権奪還を目論むのは、社民党、左翼党(旧共産党)、環境緑の党の3党からなる赤緑連合。これに対し、政権維持を目指す右派ブロックは、穏健党が率いる中央党、自由党、キリスト教民主党4党の保守連合である。
左派「赤緑連合」が勝利すれば、社民党党首サーリンが首相となり、スウェーデン初の女性首相が誕生する。一方、右派が制するなら、史上初めて2期連続で政権を担うことになる。
「福祉国家の父」社民党が凋落、2006年総選挙で下野
社民党は、1920年に選挙で政権を樹立した世界初の社会主義政党である。
1932年、世界恐慌時代に発足したハンソン社民党政権がケインズ主義的経済政策を取り、「人民の家(Folkhemmet)」と名付けた福祉国家の構築に着手。以来、現在に至るまでの78年間のうち、社民党が政権に就いた期間は65年に及ぶ。
長期にわたる安定した国民の支持を背景に、国家による所得の再分配を基礎としながら、歴代の社民党政権は労働・経済政策を積極的に推進。「格差なき成長」を目指すスウェーデン・モデルを構築した。その上に、人権や男女平等を尊重する高度な民主主義社会が築かれた。