米国企業の2009年度決算発表が本格化してきた。リーマン・ショックの影響で2008年10~12月期は1株当たり利益が大きく減少したため、今回発表される2009年10~12月期はその急回復が市場のコンセンサスとなり、各証券会社のアナリストはS&P500採用銘柄では前年比80%近い成長を予想する(記事中のグラフも筆者作成)。
実際、既に決算発表を終えた企業の8割近くが予想より上振れするポジティブな内容となっている。個人消費低迷と商業用不動産価格の下落などから、金融機関の決算には懸念も生じていたが、フタを開けてみると一定の利益水準を確保している。
ところが、株価指数は上昇の勢いを失ってしまった。
オバマ大統領が公表した金融規制案が銀行などの収益環境を厳しくするとの見方が優勢となり。株価はネガティブな反応を示した。上院補欠選挙で民主党が敗退し、大統領自身の支持率も下落。あえて金融機関を敵に回したのは、2010年11月の中間選挙に向けて低・中所得層の支持率回復を狙ったものではないかとの憶測も飛んでいる。
しかも、そのタイミングが悪い。PIIGS(財政危機に直面するポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)など、新たな問題が世界経済の重石となり始めていた矢先だったからだ。
2009年春先から、各国政府と中央銀行の庇護の下で株式市場は景気回復を先取りし、一足早く値を戻していた。ミニバブル的な様相を呈し、下落へのきっかけが欲しかったのかもしれない。そこに登場したオバマ大統領の金融機関への厳しい規制案は、株式相場に軟調入りする口実を与えてしまったようだ。
歯止め掛からぬ商業用不動産の価格下落、米銀のアキレス腱に
米国商業銀行のアキレス腱となっているのが、商業用不動産の価格下落だ。今年に入っても毎週のように、地方銀行が破綻している。ウォール街から遠く離れた地方銀行で貸出資産の劣化が進んでいる。