ブルゴーニュの中心都市ディジョン郊外から南へ、ほぼまっすぐに伸びている道路がある。その名は通称 route des grands crus(ルート・デ・グラン・クリュ=特級街道)。

 つまり、沿道にブルゴーニュの銘酒、とくに特級クラスの畑が連なる、ワイン愛好家にとっては黄金の道とも言うべきワイン街道である。ロマネ・コンティ、クロ・ド・ヴージョ、ムルソー、モンラシェ・・・。

フランスだけでなくを世界を代表するワイン産地

エンブレムを掲げて教会を目指す行列

 これら文字通り垂涎の的の銘柄は、主にこの道の西側の丘陵から生まれる。

 ちなみに、この地方の県名であるコート・ドール(Côte d’or)を日本語にすると「黄金の丘」。丘一面のブドウ畑の葉が色づき、陽光を浴びた様はさもありなんと思わせるに十分な命名である。

 さて、そのワイン産地で毎年恒例になっているお祭りがある。名は「Saint Vincent Tournante(サン・ヴァンサン・トゥルナント)」。「サン・ヴァンサン」、つまり聖ヴァンサンは、ワインの神様。

 そして、「トゥルナント」は、回る、次々に移り変わるというような意味。つまり、年ごとに違う村を舞台にして、この聖人を祭りながら繰り広げられるワイン作りに携わる人の祭りである。

 キリスト教の暦には、日ごとに聖人の名前がついているが、聖ヴァンサンの日は1月22日ということで、お祭りの日取りは、この日に近い週末が選ばれる。

村人が総出で何日間もかけて祭りを準備

ミニトレインもまた村巡りに活躍

 2006年の1月に、私はブルゴーニュ出身の友人に誘われて、初めてこの祭りを体験することになった。

 その年の開催地は、「Hautes Côtes de Nuits(オート・コート・ド・ニュイ)」。特級街道から西の丘を登り、さらにその奥に入った場所で、一帯の16の村の共同開催という年に当たっていた。

 1つの村の人口が100人あるかどうかというサイズではあるが、恐らくは村人総出で、ずいぶん前から準備して思い思いの飾りが施されているところを、この日のために特別にしたてられた巡回バスを使いながら訪ねる。

 村内ではいくつかのワイナリーが公開されていて、祭り全体の入場料のようなものを払うことによって、数カ所のワイナリーで試飲ができ、もちろん気に入った銘柄を手頃な値段で買うこともできる。