景気・物価の両面で市場の「デフレ」ないしは「デフレスパイラル」の恐怖感を強める材料が続出する中で、20日の欧米市場では、株安・債券高が加速した。原油WTI先物が1バレル=50ドル割れとなったが、景気悪化による需要減退が主因であり、株価の支援材料にはならなかった。
19日に前日比▲427.47ドルの大幅安で8000ドルを割り込んだニューヨークダウ工業株30種平均は、20日も大幅安。終値は7552.29ドル(前日比▲444.99ドル)となった。10月10 日のザラ場安値を大きく割り込み、2003年3月中旬以来の低水準。S&P500 種は752.44(前日比▲54.14)で、約11年半ぶりの安値に沈んだ。「メルトダウン」的な株価急落局面が再開している感が強い。
『政策迷走で米株安』『「過剰消費崩壊」で米株安』で予想してきたニューヨークダウの一段安が、早くも現実のものになった。2007年10月9日につけたニューヨークダウ史上最高値が1万4164.53ドル。その半値は約7082ドルとなる。ニューヨークダウの当面の下値メドはこの水準だろう。ここを割り込む恐れが高くなるようだと、ルービニ・ニューヨーク大学教授が10月に予想していた「市場閉鎖」(『「最悪期まだ」「市場閉鎖も」ルービニNY大教授が警告』ご参照)の可能性が高まるものと、筆者は考えている。
一方、「質への逃避」あるいはほかに資金の行き場がないという事情から、欧米債券相場は堅調。長期金利は低下の流れが加速した。ユーロ圏では独2年債利回りが一時1.99%まで低下し、節目の2%割れ。英国でも2年債利回りが2%を割り込んだ。10年債利回りも低下を継続している。米国では2年債利回りがついに節目の1%を割り込む動きになった(一時0.96%まで低下)。米10年債利回りも低下が加速、一気に3%を割り込む場面があった(一時2.99%まで低下)。『「Dワード」、03年相場再現』『「デフレ恐怖」ダウ底割れ』で予想した長期金利の急低下が、欧米主導で実現しつつある。
出遅れ感がある日本でも、10年債利回りの1.3%台回帰が間もなく実現するだろうし、情勢の展開次第で今後、1%ラインを試す可能性が出てきたと考えている。過去、「もうこうした水準はないだろう」と市場で誰もが思った金利・株価・為替相場の水準が、実際には現実に起きるということが、何度となく繰り返されてきた。市場はサプライズがあってこそ市場であり、そのダイナミズムを事前に完全に読みきることは不可能である。2003年の「グローバルデフレ」がテーマになった金利低下局面で起こった、10年債利回りが0.4%台に低下するというような事態も、今後発生する可能性がゼロとは言い切れない(ただしそうした流れがあっても深追いはせず、どこで「降りる」か重要になってくるという点は、『「Dワード」、03年相場再現』ですでにコメントした通りである)。