前原誠司国土交通相は、2010年1月12日、日本航空再建を企業再生支援機構主導の「公的整理」で進めると言明し、政府が全面支援する姿勢を示した。日航は19日にも東京地裁に会社更生法申請する見通しで、裁判所の管理下での抜本的な経営再建を目指す。
ナショナルキャリア・日航は企業年金や複雑な労使関係などの「レガシーコスト(負の遺産)」に悩まされ続け、結局、米国の墜ちた巨人ゼネラル・モーターズと全く同じ道を歩むことになった。
政治判断の紆余曲折が日航を翻弄
そもそも、今回、JALの再建問題を混迷させたのは、前原国交相自身と言っても過言ではない。民主党政権発足直後の2010年9月、前原氏は自民党政権が検討してきた債務延期を軸とする再建プランを白紙撤回したのだ。以来、4カ月、日航再建は、国交相直轄の再生タスクフォースの派遣とその撤退、5関係閣僚による支援合意とその実質的な撤廃など政治判断の紆余曲折に翻弄され続けてきた。
政府の方針がぶれるほどに、市場のプレッシャーは日に日に強まっていく。日航の社債デフォルトのリスクを反映する「クレジット・デフォルト・スワップ」(CDS)参考値は、一般的に「要注意」と言われる200bpsを遥かに超え、2009年9月中旬には1000bps、12月下旬には3000bps近くまで上昇。株価は11月18日に100円を割り込み、その後も低迷が続き、「実質的に11月の時点で市場から退場を宣告されていた」(取引金融機関)。
事態が大きく動いたのは12月22日。藤井裕久財務相(当時)が2010年度予算で日航へのつなぎ融資に対する保証措置を取らないと表明してからだ。もともと、民主党内には、日航支援が2010年夏の参院選に不利になるとの慎重論があり、政府保証措置の見送りの背景には、菅直人副総理国家戦略担当相(当時)の「国会審議が持たない」との政治判断があったとされる。結果的には企業再生支援機構への丸投げを通告する内容となった。
その後は「追い込まれた機構が強行して流れをつくった」(銀行幹部)。機構にとっては、政府保証の実質見送りは、機構自身に日航へのDIPファイナンスへの保証を命じられたのと同然であり、公的負担をリスクにさらす可能性が増えた。
追いつめられたメガバンク
一方で10月末以来進めてきた資産査定の結果、政府・国民が望む抜本的なリストラを進めた場合に日航が2010年3月末に8000億円強の債務超過に陥る見通しとなり、日航再建は日本政策投資銀行やメガバンクなど取引金融機関の債権放棄3000億円強だけでは穴埋めは極めて困難ということが明白になっていた。
機構の支援要件には「3年以内の財務健全化=経常黒字化」が明記されている。政府保証見送りで公的負担拡大のリスクが高まり、機構は投資の勝算を高めるには「われわれで進めるしかない」と判断。そして「法的整理によって透明性を出しながら、大幅に債務を圧縮する以外に再建は不可能」と結論付けたもようだ。