マット安川 長く政界を眺めてきた政治評論家・浅川博忠さんをお迎えして、ただただ来年を見据えている「どじょう政権」に対してメスを入れていただきました。

適材適所を果たしていない新内閣。党内議員の身分差に問題あり

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:浅川博忠/前田せいめい撮影浅川 博忠(あさかわ・ひろただ)氏
政治評論家としてテレビ・ラジオ、週刊誌などで政治解説、コメンテーターを務める。『小沢一郎 独走す』(東洋経済新報社)など、著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

浅川 今度の新内閣は適材適所がまったく果たされていません。就任9日目で辞めざるを得なかった鉢呂(吉雄)前経産大臣はもともと農水族ですし、一川(保夫)防衛大臣も農水族です。

 17人の大臣のうち民主党が16人で、そのうち10人が初入閣です。しかも、野田(佳彦)総理が小沢(一郎)さんに気をつかって、いわゆる党内融和とある程度の派閥均衡の人事になった。だから、総理は臨時国会を4日間で閉じようとしたわけです。

 各党の代表質問に対し、ボロが出ては困るということで。各大臣に少し勉強期間をつくろうという思惑だったんでしょうが、まったくのご都合主義です。最初の人事が間違っているから、そういう対応をせざるを得ないわけです。

 民主党内にもそれなりの人材がベテランにいます。当選7回くらいの政策通もいる。けれども、例えば小選挙区で負けて比例復活したいわゆる敗者復活組の人は大臣にさせず、小選挙区で勝った人を優先するからこんな人選になってしまうんです。

 小選挙区で勝った人は1等席、最初から比例は2等席、そして敗者復活は3等席みたいな、議員の中でそういう身分差をつくってしまっている。

 そもそも、いまの選挙制度には矛盾があります。いまの小選挙区比例代表並立制というのは5回実施されていますが、見ていて1つ言えるのは、政治家がだんだん小粒化してきたことです。

 以前の中選挙区時代は、個性のある政治家が大勢いた。そういう人たちはけっしてトップ当選はしないけれど、4人区や5人区でビリのほうで入ってきた。

 ところが小選挙区制では、オールラウンドプレーヤーみたいな、自分が文教も商工も経済も何でも幅広くやらなければダメだとなってしまう。そうしないと当選できない。すると万遍なく全方位外交のようになり、専門家ではなくなります。

 広く浅くのサービス業みたいな政治家が増えてきたため、非常に上げ底なんです。昔の山中貞則(元自民党衆議院議員)さんなどは税のことに関しては、当時の大蔵省の役人も太刀打ちできないくらいに勉強していた。オールラウンドプレーヤーではそうはいきません。