独自のビジネスモデルを全世界で推進し、「2015年度グループ売上1500億円」を目指しているサトー。過去の成功体験にこだわらず、常に新しい事業分野にチャレンジする同社のパワーの源泉は、日々のあらゆる分野の業務において発生する「小さな変化」です。
この小さな変化を逃さず、経営に取り入れるサトーの取り組みを紹介しましょう。
付加価値を生む源泉「3行提報」
1940年創業のサトーは、竹材加工機の製造販売からスタートし、日付や値段などをラベルに印字して商品に貼るハンドラベラーや、バーコードを印字する電子プリンターなどの製造販売を手がけてきました。
現在は、バーコードや2次元コード、RFID(ICタグ・ラベル)などの自動認識技術を用いて、様々な現場における製品や原材料など “移動する物” のデータを効率的かつ正確に収集するためのトータルソリューションを提供する独自のビジネスモデル「DCS(データ・コレクション・システムズ)& Labeling(ラベリング)」を打ち出し、グローバルにビジネスを展開しています。
このビジネスモデルは、単に製品を提供するのではなく、現場で培われたノウハウと社員のアイデアを製品と組み合わせることによって競争優位性を高めるもの。それだけに、人が生み出す付加価値こそが競争力となるのです。
サトーには、この付加価値を生み出し、経営に結びつける独自の仕組みがあります。それが「3行提報」です。
3行提報の正式名称は、「会社を良くする創意・くふう・気づいたことの提案や考えとその対策の報告」。全社員が、毎日、会社への改善や施策などの提案、共有すべき良い情報・悪い情報などを3行127文字以内にまとめて、経営トップに直接報告。
報告された内容は経営トップの意思決定に役立てられます。毎日2000通以上の提報がネット上に上げられ、社員全員の提報がどこも経由せず直接経営トップに届くため、現場の生の情報が確実に伝わります。
また、社員の小さな情報が積み重なることによって、市場動向の見極めや販売戦略にも役立ちます。
当初は社員から経営に関する有益な情報を吸い上げることを目的に始められましたが、現在はデータベース化され、経営トップからの指示やコメントも含めて、社員間で共有するナレッジマネジメントへと発展。3行提報は、社員一人ひとりが経営者の視点でものを考える意識の醸成につながっています。
「毎日」「3行にまとめる」ことで「考える」習慣が身につく
3行提報は、1975年に創業者の佐藤陽社長(当時)によって、「企業は経営者だけで経営されているものではなく全社員の力が集結されて、初めて良い経営が可能になる。サトーグループの全員が、毎日会社を良くするやり方や事柄を真剣に考えて追求していけば、それが集結した力は、計り知れないほどに強く大きな力となっていく」との考えで導入されました。
1990年に社長を引き継ぎ、サトーを東証1部上場企業にまで成長させた藤田東久夫氏(現在は取締役)は、社員向け教育書『サトーのこころ』の中で、「21世紀の初頭にあって、今なお力強く前進しているサトーを顧みる時、その最大の要因はこの3行提報であると信じて疑いません」と記しています。
それほど、3行提報はサトーにとって大きな意味を持った制度だと言えます。